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opportunistic は「日和見」という訳でいいのか? [注意したい単語・意外な意味]

先週BBCのサイトを眺めていたら、トップページに載っている別々の記事の両方に「opportunistic な殺害」という表現が使われていた。まったくの偶然でおもしろいと思ったが、そのついでにこの単語について改めて考えてみた。

どちらもいたましいニュースなので「おもしろい」とは不謹慎だと反省しつつ、2つの記事から該当部分を引用しよう。ひとつは、オーストラリアでイスラエル人の留学生が殺害され、犯人は見つかっていない、という事件である。

- "Our presumption at this stage is that this was a random attack and opportunistic." Detective Inspector Stamper told reporters.
("Israel student killed in Melbourne while on phone with sister" BBC Jan.17, 2019)

もうひとつはインドネシアからのニュースで、施設で飼われていた巨大なワニ(体長4メートル以上!)が飼育員を食い殺してしまったという恐ろしい出来事。

- Worldwide, crocodiles are estimated to kill about 1,000 humans per year, many more than sharks.
Crocodiles do not necessarily set out to hunt humans, but they are opportunistic killers.
("Indonesian woman mauled to death by giant pet crocodile" BBC Jan.17, 2019)

文脈からみても、opportunistic は「チャンスがあったら相手かまわず、ためらわず」というようなニュアンスでとらえればよさそうだ。

たまたま続けて読んだ違う記事に、同じ単語が同じように使われているとは。ニュースサイトとあってトップページも比較的短い間隔で更新されるはずだ。

そう思うと、タイミングがあった偶然にいっそう驚くが、それでも「こんなこともあるのだな」で終わり・・・となるはずだった。

しかし、ふと「opportunistic って、それらしい訳語があったはずだ」と考えた。何だったっけ? そうだ、「日和見主義の」だったな。

・・・え、「日和見主義」か? 

何か引っかかる。そこで辞書で確認である。まずは手持ちの英和辞典を見たら、確かにどれもこの訳語をあてている。「ご都合主義」という訳語を併記しているものもある。

次に日本語の「日和見主義」の意味を確かめると、どの国語辞典も、下記の「広辞苑」と同じような記述が載っていた。

- 事の成行きを見て有利な方につこうと形勢をうかがうこと

では英語圏の辞書はどうか。英語による opportunistic の定義を調べてみた。

- SHOWING DISAPPROVAL looking for and taking an opportunity, often in a way that is unfair or harms someone else
Most of the robberies have been opportunistic crimes against older people who live alone.
(Macmillan Dictionary)

- exploiting immediate opportunities, especially in an unplanned or selfish way
(COD)

- Taking immediate advantage, often unethically, of any circumstance of possible benefit.
(American Heritage Dictionary of the English Language)

- When you're opportunistic, you take advantage of that chance, usually immediately. Most of the time, this word is not neutral: people described as opportunistic are also considered unethical, like a business taking advantage of employees or customers in an opportunistic way. (以下略)
(Vocabulary.com)

こうした語義を読むと、「チャンスがあれば周囲を顧みず、直ちに行動に移してモノにしようする」というイメージが浮かんでくる。

一方、「日和見主義」から私は、チャンス到来まで待つ、というような印象を受ける。「鳴くまで待とうホトトギス」という感じだろうか。

同義語として「洞ヶ峠(を決め込む)」をあげている辞書もあるし(若い人はこんな言葉は知らないかな?)、「ご都合主義」を含め、どれも主体性がなく、どちらかといえば腰が重い感じがするのだ。

つまり opportunistic との間にニュアンスの違いがあるように感じられるのだが、いかがだろうか。ほんとうに「日和見主義の」という訳語でいいのだろうか。

このことがずっと頭にあったので、週末に書店へ行った際、私が持っていない最新の英和辞典をいくつか手に取って引いてみた。すると「出来心の」とか「機会をねらった」、あるいは「場当たり的な」という訳語が載っていた。

なるほど、これならBBCの記事にあったような言い回しにあてはめてもすんなりと理解できそうだ。さすが新しい辞書である。

ただ、こうした辞書もすべて、まずは「日和見主義」を先にあげ、次に上記の訳語が出てくるのが気になった。opportunistic だけでなく、opportunism, opportunist もそうである。

英語圏の辞書にある定義を考えると、英和辞典がどうしてそこまで「日和見」にこだわらなくてはいけないのか、と考えてしまう。いや、そう考える私こそこだわりすぎというべきなのか。

それとも、そもそも「日和見」という言葉についての私の認識に問題があるのだろうか。どうにも不安になってきたが、このへん詳しい方がいらしたらご教示いただければ幸いである。


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タグ:辞書
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