名言やことわざの学習について [英語学習]
前回、シェイクスピアに由来する "The world is my oyster." という言い回しが使われるのを実際に聞いたことがある、と書いた。だから何だ、と言われそうだが、これにちなんで考えてみたいのは、いわゆる名言名句やことわざが、ネイティブスピーカーの間でどれほどの重みを持っているのか、正面切って使われることがどれほどあるのだろうか、ということである。
ずいぶん前のことなので具体的な状況は忘れてしまったが、この時のネイティブは、この表現を何かにひっかけて冗談めかして使っていた。額面通りに「望めば何でも思い通り」と真面目に言うためではなかった、と記憶している。とはいえシェイクスピアの作品でも、この言葉が使われるのはそれほど深刻な場面ではないのかもしれないが。
そこでさらに自分の体験を思い起こすと、これもかなり前のことだが、ネイティブと話をしていた時、学生時代に覚えた英語のことわざをいくつか思い出して列挙したことがある。しかし相手は、そのいくつかは聞いたことがなく、そもそも自分はそんなにことわざは使わない、と言っていた。
その時は、その人についてはそうなのかもしれない、と特に深くは考えなかった。しかしその後も、金言やことわざのたぐいを実際に聞いたことはほとんどないような気がする。日本語でも、人生訓的な金言を日常的に真顔で口にする人がいたらちょっと妙に感じるかもしれないが、それと似たようなことだろうか。
あるいは、次のように考えたりもする。名言やことわざは、一種の cliché といえるだろうが、cliché は避けるべし、とはよく指摘されていることである。仮に使うとしても、先の "The world is your oyster" 氏のようにユーモラスに使うなど、cliché であることをわきまえた上で、状況にふさわしい形で口にする、という感じではないかと思うが、どうだろうか。
あくまで限られた個人的な経験から考えたことなので、このへんはネイティブとの交流経験が豊かな方の考えをお聞かせいただきたいところである。
ついでに、以前「住めば都」や「習うより慣れよ」を例にして書いたことを繰り返すと、日英のことわざ同士を安易に結びつけるのは危険ではないかと思う。一見似ていても、双方が意味的にぴったり重なるとは限らないのは単語と同じはずだ。
私も英語のことわざ集といった本を1冊持っているが、訳をあげたうえで、対応するとされる日本語のことわざを添えてあるだけだ。双方の意味がどれくらい重なっているかについての注意は載っていない。
名言名句やことわざを知るのは楽しいことだし、英語の勉強にもなる。ただ、それが実際にどういう意味で使われるのか、どう使うべきかについては、学校はもちろん英会話の講座でも教えられた記憶がない。現状がどうかは知らないが、変わっていないとすれば、英語学習で意外と盲点になっていることかもしれない。
巷では「コミュニケーションとしての英語」と盛んに言われているようだが、そう呼ぶからには、言葉そのものに加えて、言葉をどのように使うかにまで注意を払うことが大切になってくると思う。その意味で、名言やことわざの使い方、日英の意味のズレなどは、自己学習がなかなか難しいだけに、もっと取り上げられていいテーマではないだろうか。
なおついでだが、私が持っている電子辞書に入っている The New Oxford American Dictionary は、saying の項で adage, aphorism, apothegm, epigram, epigraph, maxim, proverb といった類語をあげて違いを説明している。類語としてはこのほか、dictum といういかめしい感じの単語もあった。
参考記事:
「住めば都」は There's no place like home. か
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2006-09-16
ずいぶん前のことなので具体的な状況は忘れてしまったが、この時のネイティブは、この表現を何かにひっかけて冗談めかして使っていた。額面通りに「望めば何でも思い通り」と真面目に言うためではなかった、と記憶している。とはいえシェイクスピアの作品でも、この言葉が使われるのはそれほど深刻な場面ではないのかもしれないが。
そこでさらに自分の体験を思い起こすと、これもかなり前のことだが、ネイティブと話をしていた時、学生時代に覚えた英語のことわざをいくつか思い出して列挙したことがある。しかし相手は、そのいくつかは聞いたことがなく、そもそも自分はそんなにことわざは使わない、と言っていた。
その時は、その人についてはそうなのかもしれない、と特に深くは考えなかった。しかしその後も、金言やことわざのたぐいを実際に聞いたことはほとんどないような気がする。日本語でも、人生訓的な金言を日常的に真顔で口にする人がいたらちょっと妙に感じるかもしれないが、それと似たようなことだろうか。
あるいは、次のように考えたりもする。名言やことわざは、一種の cliché といえるだろうが、cliché は避けるべし、とはよく指摘されていることである。仮に使うとしても、先の "The world is your oyster" 氏のようにユーモラスに使うなど、cliché であることをわきまえた上で、状況にふさわしい形で口にする、という感じではないかと思うが、どうだろうか。
あくまで限られた個人的な経験から考えたことなので、このへんはネイティブとの交流経験が豊かな方の考えをお聞かせいただきたいところである。
ついでに、以前「住めば都」や「習うより慣れよ」を例にして書いたことを繰り返すと、日英のことわざ同士を安易に結びつけるのは危険ではないかと思う。一見似ていても、双方が意味的にぴったり重なるとは限らないのは単語と同じはずだ。
私も英語のことわざ集といった本を1冊持っているが、訳をあげたうえで、対応するとされる日本語のことわざを添えてあるだけだ。双方の意味がどれくらい重なっているかについての注意は載っていない。
名言名句やことわざを知るのは楽しいことだし、英語の勉強にもなる。ただ、それが実際にどういう意味で使われるのか、どう使うべきかについては、学校はもちろん英会話の講座でも教えられた記憶がない。現状がどうかは知らないが、変わっていないとすれば、英語学習で意外と盲点になっていることかもしれない。
巷では「コミュニケーションとしての英語」と盛んに言われているようだが、そう呼ぶからには、言葉そのものに加えて、言葉をどのように使うかにまで注意を払うことが大切になってくると思う。その意味で、名言やことわざの使い方、日英の意味のズレなどは、自己学習がなかなか難しいだけに、もっと取り上げられていいテーマではないだろうか。
なおついでだが、私が持っている電子辞書に入っている The New Oxford American Dictionary は、saying の項で adage, aphorism, apothegm, epigram, epigraph, maxim, proverb といった類語をあげて違いを説明している。類語としてはこのほか、dictum といういかめしい感じの単語もあった。
参考記事:
「住めば都」は There's no place like home. か
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2006-09-16
タグ:名言・ことわざ
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なるほど・・・!確かに。
いつも拝見させてもらってます。
私も諺・名句が好きですが、「本当かな?」たまに思うことがありますから。
by いさちゃん (2009-03-07 12:46)
いさちゃん さん、私も自分の考えが正しいのか確証はないのですが、同じように考えておられるのでしたら「やはりそうなのかな」と意を強くします。
今後ともよろしくお願いいたします。
by 子守男 (2009-03-08 01:24)
たびたび、お邪魔します。「英語の諺と日本語の諺」のズレについて、なるほどと感じる記事を見つけました。コズミカ英和辞典の編集主幹 山崎先生のサイトです。ご存知かも知れませんがお知らせします。
http://jiten.cside3.jp/teaching/teaching_19.htm
「コミュニケーション能力を育成する英語教育」
少し長いのですが、引き込まれて、全部読んでしまいました。
講演の原稿おこしです。
by いさちゃんさん (2009-03-14 15:13)
いさちゃん さん、参考になるサイトを教えていただきましてありがとうございました。
やはり、 日英のことわざを1対1対応で考えるのは危険ということなのでしょうね。
また「コミュニケーションとしての英語」についてですが、私は非ネイティブと英語で意思疎通をする機会が多かったこともあり、「事実上の国際語としての英語」と、「英語圏のネイティブ言語としての英語、英米文化・英語圏の価値観を背負った言葉としての英語」との間の摩擦を感じることもありました。そのうちに、こうしたことについても書くことができれば、と思っています。
by 子守男 (2009-03-15 00:23)