SSブログ

「倒れるぞ~!」(Timber!) [和英表現]

前回取り上げた plank についての Online Etymology Dictionary の定義に timber が出てきた。「材木」を指して主にイギリスで使われるほか「立木」を意味する単語だが、木を切り倒す時に周囲に注意を呼びかける時のかけ声でもある。

以前書いた「トイレで紙の辞書を読む」ことを実践していてたまたま知ったものだ。この表現が使われる状況に私が置かれることはないだろうが、英語のクイズとして誰かに出せそうだし、知らないよりも知っている方が得した気分になるのは確かだ。

説明や実例をネットから拾ってみた。

- used as an interjection to warn people nearby that a cut tree is about to fall
They shouted “Timber!” as the tree began to fall.
(Merriam-Webster's Advanced Learner's Dictionary)

- Once the tree 'cracked' we shouted “TIMBER”, and because of our skill, would crash down in a forward direction and not backward, into the forest.
( http://www.bbc.co.uk/ww2peopleswar/stories/42/a6664142.shtml )

- The prisoners were working in the woods, cutting down trees to clear more land for farming. The inmates used axes to fell trees and when they were about to fall they shouted “timber.” Floyd recalled how a new inmate heard men working on one tree yell “timber,” and ran to clear the way. But he ran in the wrong direction, and the tree fell on him.
( http://www.pbs.org/independentlens/writwriter/makingof.html )

日本人なら誰でも、ああ、「倒れるぞ」ということだな、と思うのではないだろうか。私が持っている英和辞典も、どれもこの言葉を訳語としてあげている。唯一の例外が「リーダーズ英和辞典」で、「(木が倒れるから)気をつけろっ」と書いている。

「リーダーズ」の筆者は、「倒れるぞ」を知らないのだろうか。まさか、と思うので好意的に考えると、「この日本語は cliché であり、現実に『倒れるぞ』と言うことはないはずだ」というような信念があって訳語から外したのか。ちょっと不思議ではある。

さて、アメリカ英語では timber はもっぱら切り倒す前の木を指し、「材木」には lumber を使うことはよく知られていると思う。lumber はこのほか、イギリス英語で「厄介者、厄介なこと、トラブル」、また「がらくた、不要物」を指す。timber にはこうした意味はない。

その timber は、主に米語の用法として「人材」「素質」「人柄」を指すが、イギリス英語の lumber のように「厄介な人・もの」を指すわけではないようだ。英米の間にねじれにも似た違いがあってちょっとややこしいが、辞書を読んでいるとこうしたことがわかって面白い。

nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

nice! 0

コメント 4

nt9

こどもとChip 'n' DaleのDVDを見ていたら出てきました。

元々は、「木!!!」であって、倒れるぞでも気をつけろでもありません。訳としては、「木がっ!」、「倒れるぞー!」、「気をつけろー!」、「木が倒れるから気をつけろ!!」どれでも良いと思います。

ゴルフで"fore!"って叫ぶのと同じですね。
by nt9 (2009-07-08 11:47) 

子守男

nt9さん、この単語が一般的な意味での「倒れるぞ」「気をつける」ではないことは私も承知しています。そして、こうした状況では必ず「倒れるぞ」と訳さなくてはいけない、とも考えていません。「気をつけろ」であっても全く問題はないでしょう。

しかし、広く知られた日本語の等価表現であるといえるはずの「倒れるぞ~」を(手垢がついたものであるにせよ)、辞書が訳語として収録しないというのは、やはり寂しいと思ってしまうのです。異論はあると思いますが。
by 子守男 (2009-07-19 00:59) 

とん吉2号

子供の頃は「テーンボー」って聞こえてたのですが、あながち間違いでは無かったようです。メリケン粉位には。
by とん吉2号 (2019-03-25 21:09) 

tempus fugit

子供の頃に耳にしていたとはすごいですね。英語圏でお育ちになったのでしょうか。
by tempus fugit (2019-03-26 23:39) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

にほんブログ村 英語ブログへ
にほんブログ村← 参加中です
Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...