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「豚」インフルエンザと「パンデミック」のことなど [ニュースと英語]

新型インフルエンザの脅威が現実のものとなった。警戒されていた鳥ではなく豚に由来するもので、英文メディアには swine flu という言葉が踊っている。しかし世界保健機関 the World Health Organization のサイトを見ると、4月末から、この言葉ではなく influenza A (H1N1) と呼んでいることがわかる。

http://www.who.int/csr/disease/swineflu/updates/en/index.html

"swine flu" 自体、少し古い辞書にも見出し語として載っていたので、WHOが呼び方を変えたのだとしたら「ヒトからヒトに移るように変異した」という意味が出ないためか、などと考えた。

さらに調べると、呼称変更をめぐるAP通信の記事が見つかった。それによると、

WHO spokesman Dick Thompson said the agriculture industry and the U.N. food agency had expressed concerns that the term "swine flu" was misleading consumers and needlessly causing countries to ban pork products and order the slaughter of pigs.
( http://news.yahoo.com/s/ap/20090430/ap_on_he_me/un_who_swine_flu )

さらに関連業界からの苦情も背景にあるようだ。次は同じくAP電だが、"Is swine flu's name hogwash?" と、大変うまいタイトルがついている。この記事を載せたカナダの放送局が独自につけたものだろう。
http://www.cbc.ca/world/story/2009/04/28/swine-name-change028.html

関連記事をもうひとつ。
http://news.yahoo.com/s/ap/20090501/ap_on_he_me/med_swine_flu_name

日本の厚生労働省やマスメディアでも、「新型インフルエンザ」の使用が「豚~」より増えてきたように感じる。WHO にあわせたものだろうか。

今回、言葉の呼び方で個人的に気になるのは「パンデミック」である。「(世界的大流行)」などとカッコつきで補っている場合もあるが、ならば最初からカタカナ語ではなくこちらの言葉で表現すればいいのではないか。専門家の間では「パンデミック」が定着しているのかもしれないが、なにせ今回は広く国民の生命にかかわる事案なのだ。

その pandemic には関連語がいくつかあるが、意味に違いがあってちょっとややこしい。

- An endemic disease is one which is constantly present to a greater or less degree in any place, as distinguished from an epidemic disease, which prevails widely at some one time, or periodically, and from a sporadic disease, of which a few instances occur now and then.
( Webster's Revised Unabridged, 1913 Edition )

- pandemic
NOUN an epidemic that is geographically widespread; occurring throughout a region or even throughout the world
ADJECTIVE 1. epidemic over a wide geographical area; "a pandemic outbreak of malaria" 2. existing everywhere; "pandemic fear of nuclear war"
( Wordnet 3.0 )

覚えるのには、語源が手助けになるかもしれない。endemic は en (=in) + demos (=people, district)、pandemic は pan (=all) + demos というギリシャ語由来の言葉だ。demos は「デモクラシー」と関係あるし、pan は「パンアメリカン」や「汎~」として使われている。

ちなみに、上の定義に出てきた outbreak も新型インフルエンザ関係ではおなじみの単語というべきだろう。これも小説や映画で「アウトブレイク」とそのままのカタカナ語で使われていた。

カタカナ語でもうひとつ書けば、WHOの警戒レベルが「フェーズ5」などと呼ばれている(ある日出勤前に朝のワイドショーを見ていたら、アナウンサーが「フェーズ」ならぬ「フェース」と連呼していたのには笑った)。カタカナ語や日本語のあり方がどうこう、というより、「広く国民の生命にかかわる事案」という一点だけでも、私は誰にもわかりやすい表現を取るべきだと考える。「第5段階」だと何か不都合でもあるのだろうか。

「感染」といえば、以前「病気以外にも使う contagious」について取り上げたことを思い出したので、参考として最後にあげておきたい。

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