「不思議の国のアリス」を英語で読む (別宮貞徳) [読書と英語]
「不思議の国のアリス」の映画化にあわせた一種の便乗本かと思ったが、手に取って奥付を見ると、2004年に出版されていたものだった。Alice's Adventures in Wonderland の原文をていねいに解説した本である(作品の全文ではないが)。
しばらく目を通してから買うことを決めた。著者があの別宮貞徳氏であり、内容が面白そうだったからだ。また、「アリス」に出てくる表現で、私が以前ここで取り上げたことがある "Pigs could fly." に言及があったこともある。
「あの」別宮氏、と書いてもピンと来ない人がいるかもしれない。もうずいぶん前、私が英語を今よりずっと熱心に勉強していた頃、別宮氏は出版された翻訳本に見られる誤訳を指摘する記事や本を書いていた(今も続いているのかもしれないが、よくわからない)。
英語や翻訳に関心のある人たちの間ではかなりの反響を呼んでいたと思う。何しろベストセラーを含め、実際の書名をあげて容赦なく誤訳を指摘していたのだ。よほどの語学力と自信がないとできないことだろう。その別宮氏が「アリス」を解説した本である。
私は、英文解釈の受験参考書を含め、長文を掲げて英語を解説したタイプの本は昔から苦手である。興味を持てるかどうかわからない長文を読まされるのがまず苦痛だが、それに続く解説や記述がえてして単調だという勝手な先入観が抜けない。
しかし今回の本は読みやすく、大変参考になるものだった。この手の注釈本にあるように単語の意味を列挙するのでなく、英語面で注意すべき点や解釈する上での落とし穴などの説明を、物語の流れとうまくかみ合わせながら、読者に語りかけるような調子で進めていく。そして著者の訳は「なるほどうまいものだ」と思わされる。それを味わいながら読める本でもある。
「アリス」は子どもの頃から何回か翻訳で読んだが、どこが面白いのかどうもよくわからなかった。その後、原書を手に取った時は、この本の面白さのひとつが言葉遊びにあることは知っていたが、それを楽しんで読む力はなく挫折した。原書でも脚注がついた版があるようだし、いつか再度挑戦してみたいと思う。
この本の内容自体とは関係のないことをひとつ。この本のカバーには、「アリス」について「ナンセンス・ファンタジーの名作」と書かれている。これは出版社側でつけたのだろうが、著者自身は本文の中で「ノンセンス」という表記を使っている。
日常生活で慣用的に使われるのは「ナンセンス」だと思うが、これだと「ばかげたこと」というようなニュアンスが強いので、文学などに使うにはふさわしくない、ということだろうか。
そんな風に思って、使っている電子辞書で検索したら、どの辞書も、「ノンセンス」で引くと「ナンセンス」を参照するように指示している一方、「ブリタニカ百科事典」(日本語)では「ノンセンス文学」という項目を立てて詳述していて、「ナンセンス文学」を引くと、「ノンセンス文学」を参照せよ、と出てくる。カタカナ語とは面白く、かつ難しいものである。
さて、「アリス」と翻訳をめぐっては、今回の本を含めてもうひとつ書きたいことがあるのだが、日を改めることにする。
過去の参考記事:
・そんなバカな! (Pigs could fly.)
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2009-01-20
しばらく目を通してから買うことを決めた。著者があの別宮貞徳氏であり、内容が面白そうだったからだ。また、「アリス」に出てくる表現で、私が以前ここで取り上げたことがある "Pigs could fly." に言及があったこともある。
「あの」別宮氏、と書いてもピンと来ない人がいるかもしれない。もうずいぶん前、私が英語を今よりずっと熱心に勉強していた頃、別宮氏は出版された翻訳本に見られる誤訳を指摘する記事や本を書いていた(今も続いているのかもしれないが、よくわからない)。
英語や翻訳に関心のある人たちの間ではかなりの反響を呼んでいたと思う。何しろベストセラーを含め、実際の書名をあげて容赦なく誤訳を指摘していたのだ。よほどの語学力と自信がないとできないことだろう。その別宮氏が「アリス」を解説した本である。
私は、英文解釈の受験参考書を含め、長文を掲げて英語を解説したタイプの本は昔から苦手である。興味を持てるかどうかわからない長文を読まされるのがまず苦痛だが、それに続く解説や記述がえてして単調だという勝手な先入観が抜けない。
しかし今回の本は読みやすく、大変参考になるものだった。この手の注釈本にあるように単語の意味を列挙するのでなく、英語面で注意すべき点や解釈する上での落とし穴などの説明を、物語の流れとうまくかみ合わせながら、読者に語りかけるような調子で進めていく。そして著者の訳は「なるほどうまいものだ」と思わされる。それを味わいながら読める本でもある。
「アリス」は子どもの頃から何回か翻訳で読んだが、どこが面白いのかどうもよくわからなかった。その後、原書を手に取った時は、この本の面白さのひとつが言葉遊びにあることは知っていたが、それを楽しんで読む力はなく挫折した。原書でも脚注がついた版があるようだし、いつか再度挑戦してみたいと思う。
この本の内容自体とは関係のないことをひとつ。この本のカバーには、「アリス」について「ナンセンス・ファンタジーの名作」と書かれている。これは出版社側でつけたのだろうが、著者自身は本文の中で「ノンセンス」という表記を使っている。
日常生活で慣用的に使われるのは「ナンセンス」だと思うが、これだと「ばかげたこと」というようなニュアンスが強いので、文学などに使うにはふさわしくない、ということだろうか。
そんな風に思って、使っている電子辞書で検索したら、どの辞書も、「ノンセンス」で引くと「ナンセンス」を参照するように指示している一方、「ブリタニカ百科事典」(日本語)では「ノンセンス文学」という項目を立てて詳述していて、「ナンセンス文学」を引くと、「ノンセンス文学」を参照せよ、と出てくる。カタカナ語とは面白く、かつ難しいものである。
さて、「アリス」と翻訳をめぐっては、今回の本を含めてもうひとつ書きたいことがあるのだが、日を改めることにする。
過去の参考記事:
・そんなバカな! (Pigs could fly.)
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2009-01-20
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