続・省略符号で始まる it is (ダイアナ・クラール「ス・ワンダフル」) [音楽と英語]
前回はキング牧師の名演説にあるアポストロフィから始まる 'tis について書いたが、同じく it is を省略したのがスタンダードナンバーの 'S Wonderful である。
邦題の「ス・ワンダフル」だけでは何のことかと思うが、原題を見ると、it's を 's と表記したものだろうと想像がつく。そして実際にそうらしい。it is を省略・短縮し it's になったのを、さらに縮めて 's だけにしてしまったことになる。
明るいラブソングで、"wonderful" の他に、's のあとに "marvelous" "glamorous" "amorous" といった形容詞が続く。韻を踏んでいるうえ、だんだん魅力度(あるいは妖しさ)がアップするのが面白い。
"'S wonderful, 's marvelous,..." と繰り返し出てくる 's の部分は、it's で歌えないこともないが、続く単語がどれもなめらかな(と私には思える)響きを持つためか、きつい /ts/ 音はあまりふさわしくない(のではないかと私は勝手に思っている。まあ、単にそれで聞き慣れているのにすぎないのだろうけど)。
一方で歌詞にはまた、"paradise" "four-leaf clover"(四つ葉のクローバー)、さらに "you should care for me" などといった言葉が並んていて、単純明快で脳天気な面もある。構文や単語もやさしく、英語の初学者に向いた歌といえるかもしれない。
ジャズヴォーカルでよく取り上げられているが、ジョージ・ガーシュウィン George Gershwin が Funny Face (1927年)というミュージカルのために作曲したもので、歌詞は兄のアイラ・ガーシュウィン Ira Gershwin による。
ガーシュウィンの作品を使ったミュージカル映画「巴里のアメリカ人」 American in Paris (1951年)のほか、これまた以前紹介したことがあるフレッド・アステアとオードリー・ヘプバーンの映画「パリの恋人」(原題はミュージカルと同じ Funny Face)にも使われている。
ところが、どちらの映画でも歌っているのは男優である。「ところが」と書いたのは、私はジャズの女性歌手の歌で親しんでいたのと、先にあげた歌詞の雰囲気から女性のための歌と思い込んでいたからだ。
歌詞や歌手で性別を決めつけてはいけない例は、以前、別のスタンダードナンバー My Funny Valentine を例に書いたことがあるが、やはりひっかかってしまった。むずかしいものである。
というわけで、私の持っている女性歌手の録音では、アニタ・オデイ Anita O'Day や、以前触れたことのあるヘレン・メリル Helen Merrill といった50年代の名唱があるが、近年では、ダイアナ・クラール Diana Krall が意外とよかった。
この3人は、みな揃って特徴のある声を持つ。ダイアナ・クラールは個人的にはあまり好みではなかったが、聴いているうちにだんだん気に入ってきた。
一方、素直な歌唱に聞こえるのは、むしろ(一般的に白人歌手より声に独特のクセがあると思われがちな)黒人歌手のエラ・フィッツジェラルド Ella Fitzgerald の録音であった。こちらはこちらで好きな歌唱である。
スタンダードではしばしば chorus と呼ばれるサビを含む本編だけが歌われ、先の3人もそうだが、エラはイントロにあたる verse と呼ばれる部分から歌っている。
(参考記事)
・省略符号で始まる it is (キング牧師の "I Have a Dream" 演説)
・「ファニー・フェイス」と2つの funny (funny ha-ha, funny peculiar)
・「帰ってくれたらうれしい」か? (You'd Be So Nice to Come Home to)
・「ジャズの英語」
邦題の「ス・ワンダフル」だけでは何のことかと思うが、原題を見ると、it's を 's と表記したものだろうと想像がつく。そして実際にそうらしい。it is を省略・短縮し it's になったのを、さらに縮めて 's だけにしてしまったことになる。
明るいラブソングで、"wonderful" の他に、's のあとに "marvelous" "glamorous" "amorous" といった形容詞が続く。韻を踏んでいるうえ、だんだん魅力度(あるいは妖しさ)がアップするのが面白い。
"'S wonderful, 's marvelous,..." と繰り返し出てくる 's の部分は、it's で歌えないこともないが、続く単語がどれもなめらかな(と私には思える)響きを持つためか、きつい /ts/ 音はあまりふさわしくない(のではないかと私は勝手に思っている。まあ、単にそれで聞き慣れているのにすぎないのだろうけど)。
一方で歌詞にはまた、"paradise" "four-leaf clover"(四つ葉のクローバー)、さらに "you should care for me" などといった言葉が並んていて、単純明快で脳天気な面もある。構文や単語もやさしく、英語の初学者に向いた歌といえるかもしれない。
ジャズヴォーカルでよく取り上げられているが、ジョージ・ガーシュウィン George Gershwin が Funny Face (1927年)というミュージカルのために作曲したもので、歌詞は兄のアイラ・ガーシュウィン Ira Gershwin による。
ガーシュウィンの作品を使ったミュージカル映画「巴里のアメリカ人」 American in Paris (1951年)のほか、これまた以前紹介したことがあるフレッド・アステアとオードリー・ヘプバーンの映画「パリの恋人」(原題はミュージカルと同じ Funny Face)にも使われている。
ところが、どちらの映画でも歌っているのは男優である。「ところが」と書いたのは、私はジャズの女性歌手の歌で親しんでいたのと、先にあげた歌詞の雰囲気から女性のための歌と思い込んでいたからだ。
歌詞や歌手で性別を決めつけてはいけない例は、以前、別のスタンダードナンバー My Funny Valentine を例に書いたことがあるが、やはりひっかかってしまった。むずかしいものである。
というわけで、私の持っている女性歌手の録音では、アニタ・オデイ Anita O'Day や、以前触れたことのあるヘレン・メリル Helen Merrill といった50年代の名唱があるが、近年では、ダイアナ・クラール Diana Krall が意外とよかった。
この3人は、みな揃って特徴のある声を持つ。ダイアナ・クラールは個人的にはあまり好みではなかったが、聴いているうちにだんだん気に入ってきた。
一方、素直な歌唱に聞こえるのは、むしろ(一般的に白人歌手より声に独特のクセがあると思われがちな)黒人歌手のエラ・フィッツジェラルド Ella Fitzgerald の録音であった。こちらはこちらで好きな歌唱である。
- アーティスト: ラッセル・ガルシア・オーケストラ,ネルソン・リドル・オーケストラ,オスカー・ピーターソン,ハーブ・エリス,レイ・ブラウン,ルイ・ベルソン
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2007/02/21
- メディア: CD
スタンダードではしばしば chorus と呼ばれるサビを含む本編だけが歌われ、先の3人もそうだが、エラはイントロにあたる verse と呼ばれる部分から歌っている。
(参考記事)
・省略符号で始まる it is (キング牧師の "I Have a Dream" 演説)
・「ファニー・フェイス」と2つの funny (funny ha-ha, funny peculiar)
・「帰ってくれたらうれしい」か? (You'd Be So Nice to Come Home to)
・「ジャズの英語」
タグ:ジャズ
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