ambidextrous 「右左どちらも利き手、両手が利く」 (刑事コロンボ「指輪の爪あと」) [刑事コロンボ]
雨の週末は家にいて、往年のTVドラマ「刑事コロンボ」第1シーズンの傑作「指輪の爪あと」 Death Lends A Hand をDVDで観た。中学生の時に、確かこの原題のおかげで lend a hand という表現を覚えたはずで、思い出深いエピソードだ。また、英語版を観るようになってからは ambidextrous を知った作品でもある。
・・・と書いてみたが、実際には「へえ、こんな単語があるんだ」と感心したものの、じきに記憶から去り、忘れたままになっていた。久しぶりに鑑賞して再会したので、今回ここで取り上げることによって、「今度こそ」と定着を図りたいと思う。
殴打されて死んだ被害者の傷のつき方から、犯人は左利きの可能性があるとコロンボ警部は推理する(「刑事コロンボ」は冒頭で犯罪を描く倒叙もの inverted story とはいえ、「指輪の爪あと」とすると手がかりが明らかになってしまい、まずい邦題だと思う)。コロンボは、実は怪しいとにらんでいるブリマーという人物に、書類を渡して受取書を書いてもらう。
- Columbo: It's a receipt for the files. ...Isn't that weird? What a coincidence.
Brimmer: What's that?
Columbo: Here, a moment ago, we were talking about left-handed people, and you're left-handed.
Brimmer: And right-handed. I'm ambidextrous. That means I don't favor either hand particularly. It's a character trait shared by about 10 percent of the world's population.
Columbo: Ten percent? No kidding.
受取書を書いていたブリマーは、途中でペンを左手から右手に持ち替える。このシーンを見ると ambidextrous は「両利き」ということだろうとすぐに想像がつく。
こんな単語は、身近にこうした人がいれば別だが、単語集や何かの文でちょっと見ただけでは(少なくとも私は)頭に入らない。しかしこうしたドラマだと強力な取っかかりになる(と言ってみるものの前に見た時はすぐに忘れてしまったが)。
英語圏の辞書の説明を引用しよう。
- (Of a person) able to use the right and left hands equally well:
few of us are naturally ambidextrous
(Of an implement) designed to be used by left-handed and right-handed people with equal ease
It's an ambidextrous design for the most part, but it's still better suited for right handers.
(Oxford Dictionaries)
ここにあるように、人について「両手とも利き手」という他に、道具などについて、「右手の人も左手の人も使えるように設計されている」という意味にもなる。
さらに他の辞書を見ると、両手が使えるからということだろう、「器用な」というほめ言葉となる一方で、逆に「ずるい、二枚舌の」、さらには「バイセクシャルの、両刀使いの」という意味もあることがわかる。
- 1. able to use both hands equally well: an ambidextrous surgeon.
2. unusually skillful; facile: an ambidextrous painter, familiar with all media.
3. double-dealing; deceitful.
4. Slang. bisexual.
(Random House Unabridged Dictionary)
- 1. Having equal ability in both hands; in particular, able to write equally well with both hands.
2. Equally usable by left-handed and right-handed people (as a tool or instrument).
3. Practising or siding with both parties.
4. (humorous) Of a person, bisexual.
Synonyms both-handed either-handed
(Wiktionary)
この語は ambi-+dexter+-ous と分解でき、語源に興味のある人は辞書に説明があるのでご覧いただきたいが、知っていて役に立ちそうなのはラテン語由来の ambi- が「両方」とか「周囲」を表すということだろう。
これで始まるおなじみの単語としては、ambiguous は「二通りの解釈ができる」ので「あいまいな」、ambivalence は「(二つの)相反する感情」ということで「ためらい、躊躇」、また「アンビエンス」と日本語にもなりつつある ambience あるいは ambiance は「周囲(の様子)、環境、雰囲気」という意味になることが一層わかりやすくなると思う。
これのギリシャ語版が amphi- で、amphibian が「両生類」、amphibious 「水陸両生の、水陸両用の」、amphibolic は「あいまいな」、amphitheater だと「古代ローマの円形劇場、円形闘技場」。ちょっと変形した amphora 「古代の壺アンフォラ」は両側に取っ手がついていることに由来する。
さらに連想でもうひとつ書くと、left-handed には「左利きの」以外に「不器用な」「正式でない」「内縁の」「ウラの意味がある」といった意味もある。The Left-Handed Dictionary という、ちょっとひねった定義ばかりを載せたおもしろ辞書もあった(今は絶版のようだ)。
こうした語義は right が正統で普通である、という考えに基づくものだと思うが、見た範囲の辞書には、「こうした意味で使うのは望ましくない」というような注意書きは見当たらなかった。PCの面で問題視はされていないのかなあ、と思うが、詳しいことをご存知の方がいたら教えていただければ幸いである。
・・・と書いてみたが、実際には「へえ、こんな単語があるんだ」と感心したものの、じきに記憶から去り、忘れたままになっていた。久しぶりに鑑賞して再会したので、今回ここで取り上げることによって、「今度こそ」と定着を図りたいと思う。
殴打されて死んだ被害者の傷のつき方から、犯人は左利きの可能性があるとコロンボ警部は推理する(「刑事コロンボ」は冒頭で犯罪を描く倒叙もの inverted story とはいえ、「指輪の爪あと」とすると手がかりが明らかになってしまい、まずい邦題だと思う)。コロンボは、実は怪しいとにらんでいるブリマーという人物に、書類を渡して受取書を書いてもらう。
- Columbo: It's a receipt for the files. ...Isn't that weird? What a coincidence.
Brimmer: What's that?
Columbo: Here, a moment ago, we were talking about left-handed people, and you're left-handed.
Brimmer: And right-handed. I'm ambidextrous. That means I don't favor either hand particularly. It's a character trait shared by about 10 percent of the world's population.
Columbo: Ten percent? No kidding.
受取書を書いていたブリマーは、途中でペンを左手から右手に持ち替える。このシーンを見ると ambidextrous は「両利き」ということだろうとすぐに想像がつく。
こんな単語は、身近にこうした人がいれば別だが、単語集や何かの文でちょっと見ただけでは(少なくとも私は)頭に入らない。しかしこうしたドラマだと強力な取っかかりになる(と言ってみるものの前に見た時はすぐに忘れてしまったが)。
英語圏の辞書の説明を引用しよう。
- (Of a person) able to use the right and left hands equally well:
few of us are naturally ambidextrous
(Of an implement) designed to be used by left-handed and right-handed people with equal ease
It's an ambidextrous design for the most part, but it's still better suited for right handers.
(Oxford Dictionaries)
ここにあるように、人について「両手とも利き手」という他に、道具などについて、「右手の人も左手の人も使えるように設計されている」という意味にもなる。
さらに他の辞書を見ると、両手が使えるからということだろう、「器用な」というほめ言葉となる一方で、逆に「ずるい、二枚舌の」、さらには「バイセクシャルの、両刀使いの」という意味もあることがわかる。
- 1. able to use both hands equally well: an ambidextrous surgeon.
2. unusually skillful; facile: an ambidextrous painter, familiar with all media.
3. double-dealing; deceitful.
4. Slang. bisexual.
(Random House Unabridged Dictionary)
- 1. Having equal ability in both hands; in particular, able to write equally well with both hands.
2. Equally usable by left-handed and right-handed people (as a tool or instrument).
3. Practising or siding with both parties.
4. (humorous) Of a person, bisexual.
Synonyms both-handed either-handed
(Wiktionary)
この語は ambi-+dexter+-ous と分解でき、語源に興味のある人は辞書に説明があるのでご覧いただきたいが、知っていて役に立ちそうなのはラテン語由来の ambi- が「両方」とか「周囲」を表すということだろう。
これで始まるおなじみの単語としては、ambiguous は「二通りの解釈ができる」ので「あいまいな」、ambivalence は「(二つの)相反する感情」ということで「ためらい、躊躇」、また「アンビエンス」と日本語にもなりつつある ambience あるいは ambiance は「周囲(の様子)、環境、雰囲気」という意味になることが一層わかりやすくなると思う。
これのギリシャ語版が amphi- で、amphibian が「両生類」、amphibious 「水陸両生の、水陸両用の」、amphibolic は「あいまいな」、amphitheater だと「古代ローマの円形劇場、円形闘技場」。ちょっと変形した amphora 「古代の壺アンフォラ」は両側に取っ手がついていることに由来する。
さらに連想でもうひとつ書くと、left-handed には「左利きの」以外に「不器用な」「正式でない」「内縁の」「ウラの意味がある」といった意味もある。The Left-Handed Dictionary という、ちょっとひねった定義ばかりを載せたおもしろ辞書もあった(今は絶版のようだ)。
こうした語義は right が正統で普通である、という考えに基づくものだと思うが、見た範囲の辞書には、「こうした意味で使うのは望ましくない」というような注意書きは見当たらなかった。PCの面で問題視はされていないのかなあ、と思うが、詳しいことをご存知の方がいたら教えていただければ幸いである。
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