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stylized "T" 「Tの字をかたどった」「Tをイメージした」 (東京五輪エンブレム取り下げ) [ニュースと英語]

先日もちょっと触れたが、東京オリンピックのエンブレムが取り下げとなったニュースは、海外のメディアでもそれなりの扱いを受けていたようだ。関連の英文記事をいくつかネットで読んでみたが、そこから stylize という単語について書いてみたい。

ロイター通信の記事に、次のような形で出てきた。イギリスの通信社なので綴りは英式の stylise (同様に plagiarise)となっている。

- Sano said from the start that accusations he had plagiarised the logo announced on July 24 -- a stylised "T" with a red circle symbolic of Japan's flag -- were 'groundless', and Japanese officials backed him up, saying thorough checks had raised no legal issues.
("Tokyo 2020 scraps logo in latest blow to reputation" Sep 1, 2015
http://uk.reuters.com/article/2015/09/01/uk-olympics-japan-logo-idUKKCN0R12QK20150901)

stylize はカタカナ語の「スタイル」からも意味が想像できそうだが、辞書の記述には思いのほか難しい言葉も使われている。

-(表現・手法などを)ある特定の型にはめる、ある様式に一致させる、様式化する;因習化する;一様にする;フォルム化する
(ランダムハウス英和大辞典)

- (usually as adjective stylized) Depict or treat in a mannered and nonrealistic style:
gracefully shaped vases decorated with stylized but recognizable white lilies
(Oxford Dictionaries)

- The verb stylize means to represent something according to a particular format or structure, rather than the rules of nature.
(Vocabulary.com)

オリンピック組織委員会は、あのエンブレムについての説明を公式ホームページから削除してしまったが、ネットで調べると、「TOKYO、TEAM、TOMORROWのTをイメージし」と書かれていたのことだ(私はエンブレムを見た時、あのデザインがTを表したものとはすぐにはわからなかったが)。

ロイターの英文も、「Tをイメージした」「Tの字をかたどった(あしらった)」デザイン、というように意訳気味に言うことができるように思う。もっと適切な言い方もあるだろうが、辞書にある難しい訳語を無理に当てはめようとするよりはいいのではないだろうか。

今回のような stylize について、ネットで類例を探してみた。

- In 2007 the club added a "T" logo in the same style and energy of the primary marks. The stylized T-logo utilizes the similar colours as our primary marks: metallic graphite grey, blue and white and will be featured on the new batting practice cap and as a regular season alternate cap.
(http://toronto.bluejays.mlb.com/tor/history/uniforms_logos.jsp)

- The Block U is a large concrete hillside letter on Mount Van Cott in Salt Lake City, Utah. The stylized "U" is a logo of the University of Utah and is located just north of the university’s campus.
(https://en.wikipedia.org/wiki/Block_U)

さて、今回の五輪エンブレムは、美的感覚のない私が言うのも何だが、いまひとつアピールに欠けると思っていた。「強さ」なり「美」なり「希望」なり何でもいいのだが、伝えたいメッセージのようなものが連想できず、印象が薄かったのである。

先に紹介した組織委員会の説明文には、「黒は、ダイバーシティを。すべてを包む大きな円は、ひとつになったインクルーシブな世界を。」と書かれていたそうだが、内容を理解しようとする以前にこの日本語に呆れてしまった。

また、協賛企業のロゴと一緒に描いたポスターや看板をニュースで見るたびに、肝心のエンブレムが(左右に置かれていることもあってか)目立たず、企業のロゴに負けているな、とも感じていた。協賛企業の引き立て役にするため、わざと弱いエンブレムにしたのではと思ったくらいである。招致活動で使われていた桜のエンブレム(原案はプロではなく美大生)の方がずっと存在感がある。

もうひとつ、これはいろいろな人が指摘していることだと思うが、今回のエンブレムの選考や修正、また先の新国立競技場をめぐるゴタゴタを見ていると、決定の過程や問題発生時に、誰が最終的に判断し責任を負うのかが不透明だと感じてしまう。

太平洋戦争での「失敗の研究」、あるいは東日本大震災への対応をめぐって指摘されたことが繰り返し起きているように映る。過去の反省を活かせないのは日本人とその組織に内在する欠点だと思いたくはないのだが、そうした気持ちにならざるを得ないのが残念だ。

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コメント 2

たんご屋

この件もそうだし国立競技場の件でもそうですが、オリンピックの周辺だけ、感覚がバブル時代に戻っているという気がわたしはしました。

あのころは、あやしげなカタカナ職業の人があやしげなカタカナ語を使って企業を騙し、大金を出させてよくわからないモノを企業に作らせていたようなイメージがあります。
by たんご屋 (2015-09-09 06:51) 

tempus fugit

何を訴えたいかよくわからない「エンブレム」だったので、何を言いたいのかわからない説明文の言葉は、むしろぴったりというべきなのかもしれませんね。もちろん皮肉ですが。
by tempus fugit (2015-09-10 22:08) 

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