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続・$64 question 「重要な問題」「手ごわい問題」 (新・刑事コロンボ「殺意の斬れ味」) [数にちなむ表現]

先週は貨幣に関係にある表現について書いたが、週末にTVドラマ「刑事コロンボ」をブルーレイで観たらタイトルの表現が出てきた。何年か前に取り上げた言葉だが(→ $64 question)、その記事を読み返したら「まだ実例には接したことがない」と書いていて、私の英語接触度の貧弱さを示すものだったので、今回あらためて触れてみたい。

この表現は「重要な問題」あるいは「難題」という意味で、詳しくは以前の記事を参照していただければと思うが、まずはコロンボ警部のセリフを引用しよう。

事件解決後、捜査に協力してくれた一般市民に対して、なぜ犯人をつきとめることができたのかをコロンボがタネあかしをする最後のシーンである。渦中の登場人物 Cathleen とは初対面のはずの Patrick という男性が、見送りの際に送迎車の前部ドアを彼女のために開けるのを警部は目撃していたが、その時に疑問が湧いたと言う。

- Why would he leave the back door and come and open the front door? How would he know that Cathleen preferred the front seat? And here's the sixty-four dollar question. Why did Cathleen Calvert prefer the front seat? (中略) Cathleen preferred the front seat because she gets carsick in the back seat.
And how would Patrick know that if he didn't already know her?
And that, for me, is what broke open the case.
(Columbo: A Trace of Murder)

女性はふつう後部座席に座ってもらうものなのに、なぜ前の座席なのか。そして Patrick は言われもしないのになぜ助手席のドアを開けたのか。Cathleen は後部座席に座ると車酔いするということをコロンボはつきとめる。つまり2人は面識がなかったというのはウソで、実は以前からお互いをよく知っている間柄だったのだ。これが突破口になったとコロンボは説明する。

この表現が、1940年代のクイズ番組 "Take It or Leave It" に由来することは前回取り上げた際に書いたが、なぜ64ドルなのかは端折っていた。以下、Wikipedia からの引用である。

- (The series' writer-researcher) attempted to make each question slightly more difficult than the preceding one. After answering a question correctly, the contestant had the choice to "take" the prize for that question or "leave it" in favor of a chance at the next question.

The first question was worth one dollar, and the value doubled for each successive question, up to the seventh and final question worth $64.

During the 1940s, "That's the $64 question" became a common catchphrase for a particularly difficult question or problem.
(https://en.wikipedia.org/wiki/The_$64,000_Question)

つまり1問目で1ドル、2問目で2ドル、3問目で4ドル・・・と倍々計算になり、最後の7問目では賞金が64ドルに達する。ここから crucial question を指すようになった、というわけである。

のちに "The $64,000 Question" という番組が生まれ、ケタが増えたこちらの表現も使われるようになったことは前回の記事に書いたが、そのあと本で見つけた実例を手製の学習ノートにメモしている。いずれも007の原作にあったものだ。

まずは「ダイヤモンドは永遠に」から、ダイヤモンドの密輸事件について長々と説明する上司Mに対し、ジェームズ・ボンドが「この事件で自分は何をするのか、任務は何なのか」と切り出す。

- Bond decided it was time to put the sixty-four thousand dollar question, 'And where do I come in, Sir?' he asked, looking across the desk into M's eyes.
(Diamonds Are Forever by Ian Fleming)

「ダイヤモンドは永遠に」には他にもこの表現が出てくる場面があるが、それは "And now, ladies and gentleman, we come to the 64,000-dollar question." とアラビア数字になっていて、同じ作品の中なのに表記が異なっている。

もうひとつ、お次は「ドクター・ノオ」から。事件にかかわる謎を解き明かす答えを関係者から直接聞き出すことができれば、何週間も駈けずり回る調査をせずにすむ、とボンドが考える場面である。

- His instincts told him that this was the sixty-four thousand dollar question. If he could get the answer out of the girl he might be saved weeks of legwork.
(Doctor No by Ian Fleming)

アメリカの貨幣ドルを使った今回の表現がイギリスで好まれるということは前回の記事で紹介したが、こうした007の実例はそれを裏書きするものといえるかもしれない。

さて「コロンボ」に戻って脱線だが、今回観た邦題「殺意の斬れ味」は、いったん番組が打ち切られたあと10年後に復活した新シリーズの一編である。旧シリーズに比べて「新・刑事コロンボ」にはレベルダウンした作品が多い感があるのは否めないが、このエピソードも、引用した最後のシーンがぶちこわしだった。

「コロンボ」の諸エピソードは、犯人に向かって「あなたがやりましたね」と最後に証拠を突きつける対決場面が醍醐味なのに、市民の協力者という第三者(つまり視聴者)に謎解きをするのは、このシリーズの持ち味とはまったく逆のスタイルだ。観ている最中はけっこう良くできているなと感じるところもあったストーリーだったのに、最後で力が抜けてしまい残念だった。

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