デヴィッド・ボウイは“オッドアイ”だったのか (heterochromia, anisocoria) [音楽と英語]
デヴィッド・ボウイの大ファンというわけではではない私だが、若い頃はヒット曲をよく聞いたし、つい先日発売されたニューアルバムもCD店で試聴したばかりとあって、死去のニュースには驚いた。BBCワールドニュースもトップニュースで伝えていた。
私が子どもの時は、歌というより「ジギー・スターダスト」の奇抜なメイクと装いが印象的で、T・レックスのマーク・ボランと並んで“ヘンなミュージシャン”の代名詞のように思っていた。
大学生になった頃には、ボウイはより”普通”の路線に転じており、ヒット曲の「レッツ・ダンス」 Let's Dance など作品も親しめるものになっていたが、かつてのメイクなしの“素顔”は同性の私から見ても独特の魅力を感じさせた。イギリスの軍人を演じた映画「戦場のメリークリスマス」では、戦時中という舞台には似つかわしくない“美しさ”にも驚いた。
そして英語とのからみで私が連想するのは、彼の目である。色が左右で違って見え、初めて気づいた時には子ども心にとても不思議な印象を受けた。いつだったか、知人とその話をしていたら、「あれは『オッドアイ』というんだ」と教えられた。ネコの目によく見られるという。ついでに、ボウイの場合は生まれつきのものではなく、ガールフレンドをめぐる争いでライバルに目を殴られたことが原因だったとも聞き、やはり“伝説のスター”は違うもんだと感心した。
しかし辞書を引いたが odd eye という言葉は載っていなかったのを覚えている。今回あらためて辞書を見ても同じだった。さらにオンライン辞書の串刺し検索をしたら、唯一 Wikipedia に odd-eyed という項目があるとの結果だったが、実際にリンク先を見ると、Heterochromia iridum という名前の項目になっていて、下に小さく (Redirected from Odd-eyed) とあった。
- In anatomy, heterochromia is a difference in coloration, usually of the iris but also of hair or skin. Heterochromia is a result of the relative excess or lack of melanin (a pigment). It may be inherited, or caused by genetic mosaicism, chimerism, disease, or injury.
(https://en.wikipedia.org/wiki/Heterochromia_iridum)
英語の理解を深めるために英英辞典は必須だが、専門用語はちょっと苦しい。hetero- と chromia が合わさったものだろうと想像はつくが、やはりぴったりした日本語が知りたくなる。
そこで英和辞典でこの単語を引き直してみたが記載がない。もっとも近いものとして、heterochromatic 「2色以上の、多色の」「複数の波長(周波数)からなる」「異質染色質の」という形容詞があった。
さらにネットで調べると、heterochromia iridis として「虹彩異色症」という言葉があり、ようやくわかったような気になった。
これで問題解決か、と思ったが、Wikipedia には、List of people with heterochromia という項目もあり、そこには確かに David Bowie の名はあったものの、次のような説明もついていた。
- Bowie's status was ambiguous. Some sources indicate that Bowie's appearance resulted only from a permanently dilated pupil, and not from heterochromia. This condition is known as anisocoria.
(https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_people_with_heterochromia)
つまり、ボウイは実は「虹彩異色症」ではないとの指摘があるらしい。anisocoria も辞書には載っていなかったが、ネットで調べると「瞳孔不同」「瞳孔左右不同症」とあった。
ネットであらためて彼のアップ画像をよく見ると、確かに色自体は左右の目とも同じであるようだ。しかし瞳孔の開き具合が違っており、このため色が揃っていないような感じを受けるらしい。
さらに、ボウイについてのあるサイトを見たら、FAQ として "Why has David got odd looking eyes?" という問いに対し、「ボウイは両目の色が違うと広く誤解されている」として、
- Contrary to popular belief David DOESN'T have two different coloured eyes - they are both the same colour. The enlarged pupil only gives the "effect" of two different coloured eyes.
(http://www.bowiewonderworld.com/faq.htm#p18)
とあった。enlarged pupil とは、先の dilated pupil と同じ意味である。やはり「オッドアイ」だというのは”伝説”であったようだ。
専門用語が続いたが、ボウイの目を表現するのに、もっとやさしい単語としては mismatched eyes を使った例がネットで見つかった。これなら色のことと特定していないのも利点(?)だ。
ついでに "odd eyed (eyes)" を "David Bowie" との組み合わせで検索すると、英文ではなく日本語の文章ばかりがヒットした。次にこの英語単体で検索すると、今度はネコについての英文が並んでいる。Wikipedia にも odd-eyed cat という項目なら存在していた。ヒトには珍しいからということもあるのか、もっぱらネコについて使われる言葉なのではないだろうか。
自分でもすぐに忘れてしまうであろう難しい単語について書いたが、それにしても、1月8日の誕生日に新作をリリースした直後に逝ったデヴィッド・ボウイ、人生の最期にも"伝説”を作ったスーパースターだったという他にない。合掌。
私が子どもの時は、歌というより「ジギー・スターダスト」の奇抜なメイクと装いが印象的で、T・レックスのマーク・ボランと並んで“ヘンなミュージシャン”の代名詞のように思っていた。
大学生になった頃には、ボウイはより”普通”の路線に転じており、ヒット曲の「レッツ・ダンス」 Let's Dance など作品も親しめるものになっていたが、かつてのメイクなしの“素顔”は同性の私から見ても独特の魅力を感じさせた。イギリスの軍人を演じた映画「戦場のメリークリスマス」では、戦時中という舞台には似つかわしくない“美しさ”にも驚いた。
そして英語とのからみで私が連想するのは、彼の目である。色が左右で違って見え、初めて気づいた時には子ども心にとても不思議な印象を受けた。いつだったか、知人とその話をしていたら、「あれは『オッドアイ』というんだ」と教えられた。ネコの目によく見られるという。ついでに、ボウイの場合は生まれつきのものではなく、ガールフレンドをめぐる争いでライバルに目を殴られたことが原因だったとも聞き、やはり“伝説のスター”は違うもんだと感心した。
しかし辞書を引いたが odd eye という言葉は載っていなかったのを覚えている。今回あらためて辞書を見ても同じだった。さらにオンライン辞書の串刺し検索をしたら、唯一 Wikipedia に odd-eyed という項目があるとの結果だったが、実際にリンク先を見ると、Heterochromia iridum という名前の項目になっていて、下に小さく (Redirected from Odd-eyed) とあった。
- In anatomy, heterochromia is a difference in coloration, usually of the iris but also of hair or skin. Heterochromia is a result of the relative excess or lack of melanin (a pigment). It may be inherited, or caused by genetic mosaicism, chimerism, disease, or injury.
(https://en.wikipedia.org/wiki/Heterochromia_iridum)
英語の理解を深めるために英英辞典は必須だが、専門用語はちょっと苦しい。hetero- と chromia が合わさったものだろうと想像はつくが、やはりぴったりした日本語が知りたくなる。
そこで英和辞典でこの単語を引き直してみたが記載がない。もっとも近いものとして、heterochromatic 「2色以上の、多色の」「複数の波長(周波数)からなる」「異質染色質の」という形容詞があった。
さらにネットで調べると、heterochromia iridis として「虹彩異色症」という言葉があり、ようやくわかったような気になった。
これで問題解決か、と思ったが、Wikipedia には、List of people with heterochromia という項目もあり、そこには確かに David Bowie の名はあったものの、次のような説明もついていた。
- Bowie's status was ambiguous. Some sources indicate that Bowie's appearance resulted only from a permanently dilated pupil, and not from heterochromia. This condition is known as anisocoria.
(https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_people_with_heterochromia)
つまり、ボウイは実は「虹彩異色症」ではないとの指摘があるらしい。anisocoria も辞書には載っていなかったが、ネットで調べると「瞳孔不同」「瞳孔左右不同症」とあった。
ネットであらためて彼のアップ画像をよく見ると、確かに色自体は左右の目とも同じであるようだ。しかし瞳孔の開き具合が違っており、このため色が揃っていないような感じを受けるらしい。
さらに、ボウイについてのあるサイトを見たら、FAQ として "Why has David got odd looking eyes?" という問いに対し、「ボウイは両目の色が違うと広く誤解されている」として、
- Contrary to popular belief David DOESN'T have two different coloured eyes - they are both the same colour. The enlarged pupil only gives the "effect" of two different coloured eyes.
(http://www.bowiewonderworld.com/faq.htm#p18)
とあった。enlarged pupil とは、先の dilated pupil と同じ意味である。やはり「オッドアイ」だというのは”伝説”であったようだ。
専門用語が続いたが、ボウイの目を表現するのに、もっとやさしい単語としては mismatched eyes を使った例がネットで見つかった。これなら色のことと特定していないのも利点(?)だ。
ついでに "odd eyed (eyes)" を "David Bowie" との組み合わせで検索すると、英文ではなく日本語の文章ばかりがヒットした。次にこの英語単体で検索すると、今度はネコについての英文が並んでいる。Wikipedia にも odd-eyed cat という項目なら存在していた。ヒトには珍しいからということもあるのか、もっぱらネコについて使われる言葉なのではないだろうか。
自分でもすぐに忘れてしまうであろう難しい単語について書いたが、それにしても、1月8日の誕生日に新作をリリースした直後に逝ったデヴィッド・ボウイ、人生の最期にも"伝説”を作ったスーパースターだったという他にない。合掌。
2016-01-14 08:45
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