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それでもトランプが勝つこれだけの理由 ~ mojo 「他人をひきつける魔法のパワー」 [アメリカ政治]

アメリカ大統領選挙についてウェブをいろいろ見ていたら、お騒がせ映像作家のマイケル・ムーアが "5 reasons why Trump will win" という記事を書いていた。ユーモラスな語り口だが、もちろんムーアは反トランプ派だから、「トランプが絶対に勝つ5つの理由」というのは反語的な危機感の表明になっている。

最近の記事ではなく、7月下旬に書かれたもので、その後トランプは支持率を落として過激路線を軌道修正するような言動も見せている(参考→ ドナルド・トランプと pivot 「方針転換」「変節」)。そこで多少の状況の変化はあるかもしれないが、それでもトランプが致命的なミスを犯さないかぎり、ムーアが書いていることは引き続き当てはまるように感じる。多少背景知識が必要な言葉も出てくるが、全般的に英語もわかりやすく、一読をおすすめしたい。

今回はこの記事から mojo という単語を紹介したいが、その前に、記事の内容を私なりに簡単にまとめてみよう。

- 良識ある人なら、トランプが勝つことはありえないと考えているだろう。自宅のカウチに座ってプレステで投票できるなら、ヒラリーが大勝することは間違いない。しかし実際には、有権者に投票所へ足を運んでもらわなければならない。それだけの熱狂的ファンがついている候補者は誰だろうか?
トランプは、次の5つの理由で勝つはずだ。

- 中西部の工業地帯ミシガン、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシンは、かつて民主党の地盤だったが最近は共和党が強くなっている。苦境にあえぐ労働者にアピールして(イギリスが国民投票でまさかのEU離脱を選んだように)この4州を押さえれば、最初からヒラリーが勝つ見込みのない南部の州との選挙人の合計で、トランプは勝利できる。

- 2つめの理由として、なんだかんだいっても女性大統領を認めたくない保守的な白人男性のパワー。「8年間黒人の大統領に耐えてきたのに、次は女性の指図を受けなくてはならないのか?」

- ヒラリー自身の問題。どうにも好感度が上がらず、熱狂を巻き起こさない。前回のオバマや今回のサンダースのように、「何があっても投票する」という人をどれだけ掘り起こせるのか。

- サンダースの支持者はむしろトランプに投票する、と言われるが、実際にはそんなことはないだろう。問題はむしろ、サンダース支持者は周囲の知り合いに「ヒラリーに投票しよう」と積極的に呼びかけはしない、という点にある。

- 最後に、「何か変わったことをやってみよう」という有権者の心理。1990年代、ミネソタ州民は州知事選挙で元プロレス選手のジェシー・ベンチュラを選んだ。冷静に考えればありえないはずだったのに、既存の政治にノーを突きつけたい有権者のちょっとした悪ふざけがこうした結果を生んだ。同じことがトランプにも起こりうる。

ムーアの見方は専門的に分析すれば反論が可能なのかもしれないが、私のような凡庸かつ非アメリカ人には「なるほどそうかも」と思えてしまう。

記事の内容はこれくらいにして、mojo について書きたい。「トランプには熱狂的なファンがついている」というくだりである。

- Who’s the candidate with the most rabid supporters? Whose crazed fans are going to be up at 5 AM on Election Day, kicking ass all day long, all the way until the last polling place has closed, making sure every Tom, Dick and Harry (and Bob and Joe and Billy Bob and Billy Joe and Billy Bob Joe) has cast his ballot? That’s right. That’s the high level of danger we’re in. And don’t fool yourself -- no amount of compelling Hillary TV ads, or outfacting him in the debates or Libertarians siphoning votes away from Trump is going to stop his mojo.
("5 reasons why Trump will win" by Michael Moore)

mojo は何だか妖しい響きがあるが、意味もちょっとそんな感じで、「呪術」「まじない」「お守り」、さらに「魔法の力」「神通力」といった訳語がある。英語圏の辞書を見ると、他人をひきつけるような個人の特質について使うことがあるようで、上記トランプの例はそうした例となっている。

以前取り上げた juju という単語(→ war to end all wars 「あらゆる戦争を終わらせる戦争」って何だ?)と同じく、アフリカと関係があるようだ。

- pl. mojos or mojoes
1. A magic charm or spell.
2. An amulet, often a small flannel bag containing one or more magic items, worn by adherents of hoodoo or voodoo.
3. An ability or quality that causes one to excel or have good luck
(American Heritage Dictionary)

- chiefly US
1 A magic charm, talisman, or spell:
someone must have their mojo working over at the record company
1.1 Magic power.
Origin Early 20th century: probably of African origin; compare with Gullah moco 'witchcraft'.
(Oxford Dictionaries)

- a quality that attracts people to you and makes you successful and full of energy:
He's definitely lost his mojo.
He needs to get his mojo working if he's going to win the election.
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)

なおムーアは、今回の記事とウラオモテの関係になる「トランプを絶対負かす5つの方法」 "5 ways to make sure Trump loses" という続編も書いているので、興味のある方は参照していただきたい。

ついでだが、ジェームズ・ボンドをかつて演じたロジャー・ムーアについての記事で以前書いたように(→ ロジャー・ムーアの眉 (007「死ぬのは奴らだ」))、Moore という名前はカタカナで書けば「モア」「モーア」のように発音されることが多いので注意したい。

参考記事:
お守り(charm)
mumbo jumbo 「ちんぷんかんぷん」
abracadabra 「アブラカダブラ」「ちんぷんかんぷん」

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