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pneumatic 「出るところが出ている」「豊満な」 (「プレイボーイ」の創業者ヒュー・ヘフナー死去) [注意したい単語・意外な意味]

このブログを始めて何回目かになる国政選挙が決まった。そうした際には選挙がらみの英語をよく取り上げたりしたが(→たとえばこちら)、もはやそうした表現には食指が動かず、きょうウェブの英文記事を見ていて目にとまったのは、Playboy 誌を作ったヒュー・ヘフナー死去の記事だった。

「プレイボーイ」はかつては日本版もあったが廃刊になって久しく、本家も最盛期の面影はないようだ。さまざまな有名人が執筆者やインタビューの対象として名を連ねたが、呼び物といえばやはりヌード写真だったことは否定できまい。インターネットの時代に苦戦を強いられるようになったのは無理もないだろう。

Hugh Hefner は単にこの雑誌を創刊したというだけでなく、派手な生活を送り、まさに「プレイボーイ」を体現した人物だが、今回読んだBBCの記事に次のような一節があった。

- At this time Hefner was living a life of luxury and indulgence in his two Playboy mansions, accompanied by an ever-changing cast of celebrities and pneumatic girlfriends, and shuttling between them in his personalised DC9, the Big Bunny.
("Obituary: Hugh Hefner" BBC September 28, 2017)

ここで引っかかったのが pneumatic である。下世話っぽい内容に、なんで学術用語のような難しげな単語が出てくるのか。

とっさに連想したのは pneumonia だが、とっかえひっかえつきあっていたのが「肺炎」の女性ばかりだった、というのはいくらなんでもおかしい。文脈から当たりをつけるのはすぐにあきらめ、辞書を引いた。

- 1. of or containing wind, air, or gases
2. a. filled with compressed air: pneumatic tire
b. worked by compressed air: pneumatic drill
3. INFORMAL
having a full, shapely figure; often, specif., having large breasts: said of a woman
(Webster's New World College Dictionary)

つまり、「空気の入った」「圧搾空気で動く」(ゴムタイヤや空気ドリルなど)のほかに、「胸の大きな」(女性)を指すわけである。先も書いたように字面と意味の落差がおもしろい。ちなみに pneum-, pneumo- とは「気体」「肺」「呼吸」を表す。

おもしろいといえば、英語圏の辞書の中にも、この下世話な方の意味を載せていないものがいくつかあった。最近になって生まれた比較的新しい意味なのだろうか。

と思っていたら、次のような記述があって驚いた。

- In the novel "Brave New World" by Aldous Huxley, the word 'pneumatic' was used to describe the sensation of sex with the main female character Lenina. In this context it means well rounded, or bouncy, in reference to her breasts and her body.
(Urban Dictionary)

似たような記述は他にも見つかった。ということは、こうした意味で使われるようになったのは、オルダス・ハクスリーの有名なディストピア小説「すばらしい新世界」が最初なのだろうか。これが出版されたのは1932年である。

この小説で pneumatic が出てくる一節もネットで見つけることができた。

- "Every one says I'm awfully pneumatic," said Lenina reflectively,patting her own legs. "Awfully."
(Brave New World by Aldous Huxley)

「すばらしい新世界」は、ずいぶん前に翻訳で読んだだけで細かい内容は忘れてしまったが、20世紀前半のイギリス人作家というイメージに反してセックスも取りあげていて、意外に思ったのを覚えている。

「すばらしい」というのは反語なのだが、一見明るいフリーセックス社会だからこそ恐ろしさが際立つわけで、その点では同じディストピア小説でもジョージ・オーウェルの陰々滅々とした「1984年」とは異なっているといえるだろう。

「プレイボーイ」に関する記事で見つけた単語を探っていたらハクスリーに行き着いてしまった。今回の意味が本当にこの小説に由来するのかは不明だが、意外な展開となったのがこれまたおもしろかった。

参考記事:
ジョージ・オーウェルの英語指南
「動物農場」の新訳


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