祝!カズオ・イシグロにノーベル文学賞授与 [読書と英語]
文学にはあまり興味がない私だが、カズオ・イシグロは例外的に関心のある作家だ。このブログを始めた時から時おり取り上げてきたが、その彼が今年のノーベル文学賞を受賞した。欣快の至りである。
イシグロの作品を英文で読んだ時の体験は、10年前のエントリに書いたことがあるが(→ カズオ・イシグロの英文を味わう (「日の名残り」「浮世の画家」))、今でも私にとっては別格の存在だ。
イシグロは長崎生まれだが、5歳の時に渡英してその後帰化し、歴としたイギリス人である。今では日本語もほとんどできないという。
それでも日本のファンやマスコミは、彼に”日本”や”日本人”を見たいようだ。今回のノーベル賞決定を報じる国内メディアの記事でも、そうした”日本的なもの”に焦点を当てた記述を見つけることができる。
そして、確かにイシグロとその作品には、そんなわれわれの”願望”を叶えてくれるようなイメージがあるように思う。
またイシグロも、「日本人」「イギリス人」といった類型に当てはめられるのを嫌うような発言をする一方で、自分の中に”日本的な感性”があることを必ずしも否定していない。
今回の受賞後のコメントでもイシグロは、
- I’ve always said throughout my career that although I’ve grown up in this country and I‘m educated in this country, that a large part of my way of looking at the world, my artistic approach, is Japanese, because I was brought up by Japanese parents, speaking in Japanese.”
("Mixing Kafka with Jane Austen: Ishiguro wins literature Nobel" Reuters Oct. 5, 2017)
と述べている。
イシグロに”日本的なもの”を過度に見い出そうとするのは間違っているだろうとは思うものの、その一方で上記のような発言を聞くと、私も日本人としてうれしく思うのは否定できない。
イシグロ自身、「自分は何者か」をめぐってある種の葛藤があったのだろう。そしてそれが―日本生まれという出自以上に―彼の作品にある種の陰影を与えているのは違いあるまい。
まだ62歳だが寡作のうえ、ノーベル賞の受賞を受けて次作へのプレッシャーはいっそう大きくなるだろう、と勝手な想像をしてしまう。もちろん読者の期待も高まることになるが、新作が発表されるのはいつになるだろうか。
イシグロ関連の過去の記事:
・カズオ・イシグロの英文を味わう (「日の名残り」「浮世の画家」)
・英語を音楽のように楽しむ (カズオ・イシグロ「わたしたちが孤児だったころ)
・カズオ・イシグロの「日の名残り」~映画と小説
・「交渉する」ではない negotiate (カズオ・イシグロ「浮世の画家」)
・fresh water は「新鮮な水」か? (カズオ・イシグロ「日の名残り」)
・person 「身体」 (カズオ・イシグロ「日の名残り」)
・betray 「さらけ出す、あらわにする」 (カズオ・イシグロ「日の名残り」)
・steal a glance 「盗み見をする」 (カズオ・イシグロ「日の名残り」)
・pipe down 「黙る」 (カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」)
・go ballistic 「カンカンに怒る」「キレる」 (カズオ・イシグロ「夜想曲集」)
・booming laugh 「割れんばかりの笑い」 (カズオ・イシグロ「夜想曲集」)
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イシグロの作品を英文で読んだ時の体験は、10年前のエントリに書いたことがあるが(→ カズオ・イシグロの英文を味わう (「日の名残り」「浮世の画家」))、今でも私にとっては別格の存在だ。
イシグロは長崎生まれだが、5歳の時に渡英してその後帰化し、歴としたイギリス人である。今では日本語もほとんどできないという。
それでも日本のファンやマスコミは、彼に”日本”や”日本人”を見たいようだ。今回のノーベル賞決定を報じる国内メディアの記事でも、そうした”日本的なもの”に焦点を当てた記述を見つけることができる。
そして、確かにイシグロとその作品には、そんなわれわれの”願望”を叶えてくれるようなイメージがあるように思う。
またイシグロも、「日本人」「イギリス人」といった類型に当てはめられるのを嫌うような発言をする一方で、自分の中に”日本的な感性”があることを必ずしも否定していない。
今回の受賞後のコメントでもイシグロは、
- I’ve always said throughout my career that although I’ve grown up in this country and I‘m educated in this country, that a large part of my way of looking at the world, my artistic approach, is Japanese, because I was brought up by Japanese parents, speaking in Japanese.”
("Mixing Kafka with Jane Austen: Ishiguro wins literature Nobel" Reuters Oct. 5, 2017)
と述べている。
イシグロに”日本的なもの”を過度に見い出そうとするのは間違っているだろうとは思うものの、その一方で上記のような発言を聞くと、私も日本人としてうれしく思うのは否定できない。
イシグロ自身、「自分は何者か」をめぐってある種の葛藤があったのだろう。そしてそれが―日本生まれという出自以上に―彼の作品にある種の陰影を与えているのは違いあるまい。
まだ62歳だが寡作のうえ、ノーベル賞の受賞を受けて次作へのプレッシャーはいっそう大きくなるだろう、と勝手な想像をしてしまう。もちろん読者の期待も高まることになるが、新作が発表されるのはいつになるだろうか。
イシグロ関連の過去の記事:
・カズオ・イシグロの英文を味わう (「日の名残り」「浮世の画家」)
・英語を音楽のように楽しむ (カズオ・イシグロ「わたしたちが孤児だったころ)
・カズオ・イシグロの「日の名残り」~映画と小説
・「交渉する」ではない negotiate (カズオ・イシグロ「浮世の画家」)
・fresh water は「新鮮な水」か? (カズオ・イシグロ「日の名残り」)
・person 「身体」 (カズオ・イシグロ「日の名残り」)
・betray 「さらけ出す、あらわにする」 (カズオ・イシグロ「日の名残り」)
・steal a glance 「盗み見をする」 (カズオ・イシグロ「日の名残り」)
・pipe down 「黙る」 (カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」)
・go ballistic 「カンカンに怒る」「キレる」 (カズオ・イシグロ「夜想曲集」)
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タグ:カズオ・イシグロ
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