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break the fourth wall 「登場人物が観客に語りかける」 (007「ネバーセイ・ネバーアゲイン」) [数にちなむ表現]

前回書いた a fly on the wall とは似て非なる表現として頭に浮かんだのが、演劇や映画などで使われる break the fourth wall である。「第4の壁を破る」ということだが、そもそも”4番目の壁”とは何のことだろうか、それがわからないと見当のつけようがない。

劇で演じられるのは、観客がいる”こちら側”とは別の世界である。舞台は観客の目の前にありながら、演技者は観客が存在しないかのように振る舞う。双方の間には、舞台を取り囲む左・右・奥の3つの壁以外に、見えない”第4の壁”があることになる。映画やテレビドラマについても同じことがいえる。

・・・とエラそうに書いたが、演劇や映画に造詣が深いわけではない私がこの言葉や表現を知ったのは偶然だった。007の映画 Never Say Never Again についての記事で目にしたのである。初代ジェームズ・ボンドのショーン・コネリーが久しぶりに007に復帰して話題となった1983年の作品だ。

コネリー主演とはいえ、長年続いているイオン・プロダクション製作の007シリーズとは関係のない独立した作品なので、有名なテーマ音楽や、ボンドを銃口が狙う「ガンバレル・シークエンス」gun barrel sequence と呼ばれるオープニング画像は出てこない。

それはともかく、(ネタバレになるが)この映画のエンディングは、「スパイ活動の第一線にまた戻らないか?」と言われたボンドが "Never again." と答え、カメラ目線で(つまり映画の観客に向けて)ウィンクする、というものだ。

"Never again." という答えが、映画のタイトルや、コネリーが再び007を演じることにかけているのはもちろんだが、このシーンが「第4の壁を破る」と表現されているのを何かで読み、今回の表現を知った。

その時の英文は手元に残っていないが、ネットで検索すると、同様の記事がいくつかヒットする。たとえば、

- At the end of the film, Sean Connery (Bond) winked at the camera, breaking the "fourth wall," as he affirmed: "Never again."
http://www.filmsite.org/series-jamesbond4a.html

- Bond returns to the Bahamas with Domino, only to be interrupted by Nigel Small-Fawcett, pleading for Bond to return and safeguard the civilized world. Bond replies, “Never again.” Domino asks somewhat skeptically, “Never?” As Bond embraces Domino, he breaks the fourth wall and winks at the camera.
http://www.filmnav.co.uk/1983/12/15/never-say-never-again/

ということで、劇や映画などの登場人物が、掟を破って観客や視聴者を意識した言動を取ることを「第4の壁を破る」と表現するわけである。

辞書にある fourth wall の説明や例文を引用しよう。演劇や映画だけでなく、読み物についても使えるという。

- 1. The imaginary barrier that is considered to separate the audience from the characters in a play or other live performance:
an actor who broke the fourth wall by directly addressing an audience member.
2. A similar imaginary barrier that is considered to separate a viewer from a film or other recorded performance:
traditional films that maintain the illusion of the fourth wall.
3. A similar imaginary barrier regarding as separating a text from its readers.
[From its use in the theater, where it is likened to a wall that would complete the enclosure of a proscenium stage.]
(The American Heritage Dictionary of the English Language)

長くなるので引用しないが、このほか動詞として drop, remove また keep, maintain あるいは fix, look into を使った用例もあった。

余談だが、007の映画で break the fourth wall する場面が出てくるのは、Never Say Never Again が最初ではないという。

2代目ボンドとしてジョージ・レーゼンビーが主演した「女王陛下の007」 On Her Majesty's Secret Service は、強烈な印象を残した初代コネリーと比較されて割を食った形になっているが、原作に忠実な人間的ボンドを描いていて、シリーズのベストを争う傑作という見方もある。私も大好きな作品だ。

この映画は、ボンドが謎の女性を取り逃がしてしまうシーンで始まるが、その時にレーゼンビーの007がつぶやくセリフが、

- This never happened to the other fella.

というものだ。これについて今回の表現を使った英文があった。

- Bond comments, "This never happened to the other fellow" (the only time the character breaks the fourth wall in the official series, although Connery as Bond does so at the end of the unofficial Bond film, Never Say Never Again), initiating the title credits sequence.
http://jamesbond.wikia.com/wiki/On_Her_Majesty%27s_Secret_Service_(film)

the other fella (fellow) 「別の人物」とは、コネリー演じた初代ボンドを指しているそうだ。「アイツにはこんなことは起きなかったのに」とは、敵や女性を取り逃がすことはなかった先代007の存在を主人公が観客に示していて、「第4の壁」を破ったことになる、というわけである。




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