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stubble ~「無精ヒゲ」を生やしたトルドー首相 [ニュースと英語]

前回に続いて、ロバート・J・ソウヤーのSFミステリ「イリーガル・エイリアン」の原書ペーパーバックで拾った単語を取り上げよう。stubble は「無精ひげ」という意味である。

ずっと前に読んだ時に目にとまって印をつけていたものだが、たまたま今月はじめに見た雑誌の記事でもこの単語にお目にかかっていた。そして先日、書棚を整理した際にこのペーパーバックをパラパラとめくっていたら印に気づいたので、短期間に同じ単語に続けて出会ったのはおもしろい偶然だと思い、書いておくことにした。

まずは「イリーガル・エイリアン」の方から。

- Frank immediately returned to his room and began making calls on his cellular, talking to a dozen different people in Washington. Two hours later the first phone call he'd made was returned. He put the phone to his now stubble-covered cheek. "Nobilio," he said.
"Dr. Nobilio, please hold for Olympus."
Frank waited through about a minute of static, then the familiar voice came on. "Frank?"
"Hello, Mr. President."
(Illegal Alien by Robert J. Sawyer)

同じ単語を雑誌でも見たと書いたが、もちろん、そんな細かいことを直接覚えている記憶力を持っているわけではない。

カナダのトルドー首相といえば若々しいイメージがあるが(まだ40代後半なので実際若い)、新年の休み明けに姿を現した際の映像を見たらひげを生やしていたので驚いた。頭髪は黒いが、ひげにはけっこう白髪がある。これだけで、よく言えば威厳が増し、悪く言えば老けた感じになった。

さっそくこれについて触れた記事が英誌「エコノミスト」に載っていたので、印象に残っていたのである。

- Justin Trudeau returned from his Christmas break in Costa Rica with a new look. Canada’s prime minister has sprouted a salt-and-pepper stubble, making him look slightly less youthful. His makeover hints that he intends to govern differently in his second term, which began late last year. He has plenty of reasons to change his approach.
("Justin Trudeau’s less ambitious second term as Canada’s prime minister" The Economist Jan 9th 2020)

ここに出てくる salt-and-pepper は髪に使った場合、「白髪まじりの」「ごま塩」という意味になる。

ネットで調べるとトルドー首相のひげについては facial hair とか beard を使っている記事もあったが、stubble という単語には何となく「チクチクした」という響きが感じられるように思う。「イリーガル・エイリアン」での状況など特にそうだ。

s-音で始まる単語は鋭さを示すものが目立つことを受けた私の勝手な連想・・・とも限らないようだ。stubble は本来「(穀物の)刈り株」のことで、これを「刈り株状のもの」として使ったものだからである。

stubble の定義と例文を引用しておこう。

- 1 The cut stalks of grain plants left sticking out of the ground after the grain is harvested.
1.1 Short, stiff hairs growing on a part of the body that has not been shaved for a while, especially on a man’s face.
He is of medium build and has dark brown hair and stubble.
He also had slight stubble on his chin, as if he hadn't shaved that day.
(Oxford Dictionaries)

「無精ひげ」というと、メンドウだとか時間がないとかで剃らない・剃れないままにしている(だから「無精」)ということのはずだが、実際にはそれなりに手を入れて「無精ひげ風」にしている場合も多いだろう。

ひげの濃い人は夕方になると five-o'clock shadow が目立ってくるが、こちらの方が生やしっぱなしという意味では本来の「無精ひげ」に近いと言えるかもしれない。

なおウェブで調べると、トルドー氏は昔はひげを生やしていて首相就任前に剃ったということなので、むしろ元に戻したと言うべきなのだが、そんなことは知らなかったので、今年はじめに見た時はびっくりしたものだ。

ついでだが、少し前にカナダ人と話す機会があった際、「お国の首相は若くてハンサムで、難民受け入れにも積極的のようで・・・」と言ったら、「外国では好印象を持たれているようだが、国内での支持はずーっと下がっている。俺も評価しない」という内容のことを言っていた。

若い頃の人種差別的な”おふざけ”写真がすっぱ抜かれただけでなく、内政を中心に課題を抱えているようで、年明けにヒゲ面にしたのは心機一転の意味をこめたのであろうか。


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  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2002/10/01
  • メディア: 文庫


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