concurrent 「同時に起こる」「いっしょに行われる」 [ニュースと英語]
英誌「エコノミスト」のバックナンバーを眺めていたら、日本について書かれた今月はじめの記事に concurrent が出てきた。私にとって、意味は一応わかるものの何だか掴みどころがないと感じている形容詞なのだが、今回はわかりやすい文脈で使われていたので、その実例をメモしておきたい。
英和辞典には「同時に発生(存在)する」「共存する」「併発する」といった訳語が載っている。私は con- 「共に」+ current「現在の」ということだろうと勝手に決めつけて覚えたが、辞書を見ると実はそうではなく、語源はラテン語 concurrere「一緒に走る」の現在分詞、なのだそうだ。
「エコノミスト」誌は、日本のコロナウイルスの現状について取り上げた記事で次のように使っていた。なお私が読んだ紙版の記事には "Hungry for visitors" という、目を引く別の見出しがついている。
- The Diet earmarked ¥1.35trn ($12.9bn) for "Go To Travel" subsidies, which provide discounts of up to 35% at domestic hotels and inns; a concurrent programme called "Go To Eat" applies to restaurants.
("A crash in tourism leaves Japanese deer ravenous for treats" The Economist Dec. 3, 2020)
「Go To イート」は「Go To トラベル」といっしょに行われている施策だ、ということがこう表現されていて、なるほど、と思った。
自分の英語学習ノートを見直したら、副詞の形で下記の実例がメモしてあった。ここでは「兼務の」「兼職の」という意味で使われている。
- Young people are loth to stand because local politics is not a financially rewarding profession. The law bans assembly members from holding other jobs concurrently.
余談だが、実例をあげた The Economist の記事は、短いが書き方が秀逸だと思った。
新型コロナウイルスの影響で観光客が激減したため、鹿せんべいをもらえなくなった奈良のシカが以前とは異なる行動を見せている、という話から説き起こし、日本の観光業界の苦境と菅政権の対策を紹介している。そして最後に再び奈良のシカにまつわる別のエピソードをあげて締めくくっている。うまいものだなあ、と感じた。
もうひとつ、"Go To Travel" はどう考えても和製英語で不自然な英語だと思うが、日本政府がこう名づけている以上、英語圏のメディアも、引用符をつけてはいるがそのまま使わざるを得ないのがおもしろろい。
「Go To トラベル」といった今回のキャンペーンの呼称について、英語の専門家などプロの方々が「おかしい」と指摘しているが、そうした「正論」も影が薄くなってしまうのが、日本人・日本語の融通無碍さというか、いいかげんさなのだと思う。
さらに余談だが、「エコノミスト」誌は、この次の週も日本のコロナウイルスの現状についての記事を載せていた。
("3C epiphany - The Japanese authorities understood covid-19 better than most" Dec.12, 2020)
ただこちらは、「奈良のシカ」のようなエピソードはなく、ストレートに記述している。それはいいのだが、上記のタイトルからもわかるように、「感染の封じ込めに成功している」と日本の施策を高く評価する内容となっており、違和感を抱いてしまった。
すでに第3波の広がりが顕著になり、医療現場の逼迫も指摘されていたはずなので、この記事のような前向きの気持ちには到底なれないと思うのだが。
記事は最後のパラグラフで最近の感染再拡大に触れているが、何だか取ってつけたような感じも受ける。第3波の拡大が顕著になる前に執筆したあと、入稿直前になって状況が悪化し、記事全体を書き直すのが間に合わなかった、ということなのだろうか。
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英和辞典には「同時に発生(存在)する」「共存する」「併発する」といった訳語が載っている。私は con- 「共に」+ current「現在の」ということだろうと勝手に決めつけて覚えたが、辞書を見ると実はそうではなく、語源はラテン語 concurrere「一緒に走る」の現在分詞、なのだそうだ。
「エコノミスト」誌は、日本のコロナウイルスの現状について取り上げた記事で次のように使っていた。なお私が読んだ紙版の記事には "Hungry for visitors" という、目を引く別の見出しがついている。
- The Diet earmarked ¥1.35trn ($12.9bn) for "Go To Travel" subsidies, which provide discounts of up to 35% at domestic hotels and inns; a concurrent programme called "Go To Eat" applies to restaurants.
("A crash in tourism leaves Japanese deer ravenous for treats" The Economist Dec. 3, 2020)
「Go To イート」は「Go To トラベル」といっしょに行われている施策だ、ということがこう表現されていて、なるほど、と思った。
自分の英語学習ノートを見直したら、副詞の形で下記の実例がメモしてあった。ここでは「兼務の」「兼職の」という意味で使われている。
- Young people are loth to stand because local politics is not a financially rewarding profession. The law bans assembly members from holding other jobs concurrently.
余談だが、実例をあげた The Economist の記事は、短いが書き方が秀逸だと思った。
新型コロナウイルスの影響で観光客が激減したため、鹿せんべいをもらえなくなった奈良のシカが以前とは異なる行動を見せている、という話から説き起こし、日本の観光業界の苦境と菅政権の対策を紹介している。そして最後に再び奈良のシカにまつわる別のエピソードをあげて締めくくっている。うまいものだなあ、と感じた。
もうひとつ、"Go To Travel" はどう考えても和製英語で不自然な英語だと思うが、日本政府がこう名づけている以上、英語圏のメディアも、引用符をつけてはいるがそのまま使わざるを得ないのがおもしろろい。
「Go To トラベル」といった今回のキャンペーンの呼称について、英語の専門家などプロの方々が「おかしい」と指摘しているが、そうした「正論」も影が薄くなってしまうのが、日本人・日本語の融通無碍さというか、いいかげんさなのだと思う。
さらに余談だが、「エコノミスト」誌は、この次の週も日本のコロナウイルスの現状についての記事を載せていた。
("3C epiphany - The Japanese authorities understood covid-19 better than most" Dec.12, 2020)
ただこちらは、「奈良のシカ」のようなエピソードはなく、ストレートに記述している。それはいいのだが、上記のタイトルからもわかるように、「感染の封じ込めに成功している」と日本の施策を高く評価する内容となっており、違和感を抱いてしまった。
すでに第3波の広がりが顕著になり、医療現場の逼迫も指摘されていたはずなので、この記事のような前向きの気持ちには到底なれないと思うのだが。
記事は最後のパラグラフで最近の感染再拡大に触れているが、何だか取ってつけたような感じも受ける。第3波の拡大が顕著になる前に執筆したあと、入稿直前になって状況が悪化し、記事全体を書き直すのが間に合わなかった、ということなのだろうか。
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