'disorder, borders on sedition'~バイデン氏のレトリック? [アメリカ政治]
前回に続いて、アメリカ連邦議会の一時占拠について短く書くことにする。乱入が起きてまもなく、バイデン次期大統領は次のような非難のコメントを発表した。
- Let me be very clear: the scenes of chaos at the Capitol do not represent who we are. What we are seeing is a small number of extremists dedicated to lawlessness. This is not dissent, it's disorder. It borders on sedition, and it must end. Now.
https://twitter.com/JoeBiden/status/1346928275470299142
さらに演説も行ったが、そこにも上記とほぼ同じ言葉が織り込まれており、この部分がテレビニュースなどで実音で使われていた。
私はこの部分を聞いて、事態の深刻さはもちろんだが、一方で、「わざとこうした単語を選んだのかな?」と、英語についても考えをめぐらせた。
つまり、dissent - disorder - borders、さらにいえばたぶんその次の sedition も、共通した音を持つ単語で揃えたように感じたのだ。
dissent は「不同意、異議」、disorder は「混乱、騒乱」。borders on は「~に接する」「ほとんど~である、~すれすれ」、sedition は私もピンとこなかったので辞書を引くと「扇動、反乱、治安妨害」とある。
いずれも、他の単語でも同じような意味を表すことができるはずだ。しかしレトリック上の効果をあげるために、バイデン氏(というか、実際にはたぶんスタッフ)が、意図的にこうした言い方にしたのではないだろうか。
なお、ある辞書の sedition の項には「insurrection, rebellion にならない程度のもの」と書かれているが、だからといってバイデン氏が今回の事態を重大視していない、ということではないはずだ。レトリックとしてこの語を選んだと考えれば説明もつく。
同義語・類義語のニュアンスの違いを知るのは確かに重要なことだし、それを説明する書物を英語のプロの人達がいろいろ著している。
しかし現実には、レトリックあるいは単純に単語の繰り返しを避けるために(英語は日本語と違って同一の単語を続けて使うのを嫌う言語だ)類義語を使うことがある。その場合、書物や辞書に載っている先生方の記述を真正直に当てはめて解釈すると、おかしなことになる恐れがあるはずだ。
さてバイデン氏は、今回のコメントや去年11月はじめの勝利宣言など、節目節目で印象的な表現が出てくるスピーチをしてきた感がある。ただ年齢のためか、やはり力強さには欠けるのは確かで、歯切れも今ひとつの感は否めないように思う。
今回の出来事で、さすがに支持者もトランプ離れをするかと思いきや、直後の世論調査によると、そうとも言えないようだ。事件に反対し否定的にとらえる有権者は、民主党支持者は圧倒的に多いものの、共和党支持者はそこまでではないという結果が出たという。
アメリカ社会の分断が容易には変わらないことを示すものだが、バイデン新政権の発足に向けて更なる disorder や chaos, sedition が起きないことを願うばかりだ。
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https://twitter.com/JoeBiden/status/1346928275470299142
さらに演説も行ったが、そこにも上記とほぼ同じ言葉が織り込まれており、この部分がテレビニュースなどで実音で使われていた。
私はこの部分を聞いて、事態の深刻さはもちろんだが、一方で、「わざとこうした単語を選んだのかな?」と、英語についても考えをめぐらせた。
つまり、dissent - disorder - borders、さらにいえばたぶんその次の sedition も、共通した音を持つ単語で揃えたように感じたのだ。
dissent は「不同意、異議」、disorder は「混乱、騒乱」。borders on は「~に接する」「ほとんど~である、~すれすれ」、sedition は私もピンとこなかったので辞書を引くと「扇動、反乱、治安妨害」とある。
いずれも、他の単語でも同じような意味を表すことができるはずだ。しかしレトリック上の効果をあげるために、バイデン氏(というか、実際にはたぶんスタッフ)が、意図的にこうした言い方にしたのではないだろうか。
なお、ある辞書の sedition の項には「insurrection, rebellion にならない程度のもの」と書かれているが、だからといってバイデン氏が今回の事態を重大視していない、ということではないはずだ。レトリックとしてこの語を選んだと考えれば説明もつく。
同義語・類義語のニュアンスの違いを知るのは確かに重要なことだし、それを説明する書物を英語のプロの人達がいろいろ著している。
しかし現実には、レトリックあるいは単純に単語の繰り返しを避けるために(英語は日本語と違って同一の単語を続けて使うのを嫌う言語だ)類義語を使うことがある。その場合、書物や辞書に載っている先生方の記述を真正直に当てはめて解釈すると、おかしなことになる恐れがあるはずだ。
さてバイデン氏は、今回のコメントや去年11月はじめの勝利宣言など、節目節目で印象的な表現が出てくるスピーチをしてきた感がある。ただ年齢のためか、やはり力強さには欠けるのは確かで、歯切れも今ひとつの感は否めないように思う。
今回の出来事で、さすがに支持者もトランプ離れをするかと思いきや、直後の世論調査によると、そうとも言えないようだ。事件に反対し否定的にとらえる有権者は、民主党支持者は圧倒的に多いものの、共和党支持者はそこまでではないという結果が出たという。
アメリカ社会の分断が容易には変わらないことを示すものだが、バイデン新政権の発足に向けて更なる disorder や chaos, sedition が起きないことを願うばかりだ。
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