gleeful ～他人の不幸は蜜の味 #2

単語を訳語との単純な１対１の対応で覚えることの危なさは以前何度か書いたことがあるが、最近目にした gleeful もそんな例といえそうなので、取り上げてみたい。

先月の英誌「エコノミスト」にあった leader （社説）を月遅れで読んでいて目にとまったものだ。９・１１テロから２０年になったことにからむ内容である。

- President Joe Biden says the exit from Afghanistan was about “ending an era” of distant wars, but it has left America’s allies distraught and its enemies gleeful.
("America then and now: Twenty years after 9/11" The Economist, September 11, 2021)

バイデン大統領が期限通りに行い、混乱や批判を招いたアフガニスタンからのアメリカ軍撤退は、米国の同盟国を困惑させ、敵対する側を喜ばせた、ということで、これ自体は難しい内容ではなかろう。

ただ、ここに出てくる distraught や gleeful は私にとって何とか意味を思い出せる単語で、ましてや自分からすっと出てくることはないので、あらためて辞書で確かめたら、後者について興味深い記述があった。

- 大喜びの、陽気な、上機嫌の、はしゃいだ；喜ばしい、うれしい（しばしば他人の不幸・失敗を喜ぶときに用いる）
（ランダムハウス英和大辞典）

- （通例限定）大喜びの、上機嫌の（特に他人の不幸や失敗を喜ぶという意味合いを含む）
（ジーニアス英和大辞典）

- happy because of something good you have done or something bad that has happened to somebody else
a gleeful laugh
(OALD)

- someone who is gleeful is happy and excited, often because of someone else's bad luck
He took an almost gleeful delight in showing how wrong they can be.
(Collins COBUILD Advanced Dictionary of English)

単に「大喜びの、陽気な」という訳語しか書いていない英和辞典もけっこうあったが、これだけではこの単語の使われ方を的確に把握することはできないだろう。

実は gleeful のこうした意味合いについては以前チェックしたことがあったらしく、自分が作り続けている英語学習ノートに次の抜き書きがあった。今は昔、トランプ氏が大統領に当選した際の「タイム」誌から写していたものだ。

- Donald John Trump, political novice, self-promoter and gleeful provocateur, was elected the 45th President of the United States on Nov. 8 in one of the most extraordinary and unforeseen developments in American history.
("The Making of President Donald Trump" TIME, November. 9, 2016)

この gleeful に下線が引いてあったので、たぶん調べて今回書いたニュアンスに気をとめたのだと思うが、何の注記もしておらず当時このブログで取り上げてもいない。そこで、その場限りとなって自分の中で定着することもなかったことになる。私も所詮はその程度の学習者であるのが悲しい。

なお、「他人の不幸を喜ぶ」ことを表す単語として、だいぶ前に Schadenfreude を取り上げたことがある（→こちら）。「シャーデンフロイデ」として日本語でも使われるようになってきているようだ。

過去の参考記事：
・他人の不幸は蜜の味 (Schadenfreude)
https://eigo-kobako.blog.ss-blog.jp/2008-09-19


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