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決着はついた!~The fat lady has sung.(バイデン氏、当選確実) [アメリカ政治]

週末はアメリカ大統領選挙の行方をウェブで眺めていたが、十数年前にこのブログで取り上げた表現が変形された形で使われていたので取り上げてみたい。The opera isn't over until the fat lady sings. がその表現である。

開票がなかなか終わらない州のひとつがジョージアだったが、州都アトランタがあるフルトン郡で集計が大詰めを迎えたことについて、責任者は次のように述べた。

- "Here in Fulton County, the fat lady has almost sung. All early votes have been counted, all day-of votes have been counted, all absentee ballots have been counted," said Robb Pitts, chairman of the Fulton County Board of Commissioners.
("Georgia's Fulton County expects to upload more provisional and overseas ballots" CNN November 6, 2020)

The opera isn't over till the fat lady sings. 「オペラは太った女性歌手が歌うまで終わらない」とは、オペラは(少なくともかつては)体格のよい女性がヒロインをつとめることが多く、クライマックスにその歌手が出ないと終わらない・・・ということだ。

そこから転じて、「ことは最後の最後になるまでわからない」「勝負はゲタをはくまでわからない」という意味で使われるようになった。なお似た表現に It's not over until it's over. があり、これも以前取り上げたことがある(→こちら)。

記事では The fat lady has almost sung. という形で使って、「集計はもう少しで終わります」「そう遠からず結果が出ます」と言おうとしているのであろう。こうしたフレーズがさらりとコメントの中で使われることに、知識として持っているだけの非ネイティブスピーカーの私は、とてもマネできないことだなと思ってしまう。

また、慣用句とはいえ "fat lady" なんて言ってしまって文句が来ないのか、とも思う。日本語でもそうだが、こうしたフレーズやイディオムは言葉をそのままに受け取るわけではないと英語ネイティブが書いているのを読んだことがあるが、非ネイティブには皮膚感覚としてはわからないことだ。類例としては、colored は使うとまずいのに people of color はアフリカ系アメリカ人も使っているようで、不思議に思ってしまう。

ついでだが、上記の記事には

- Provisional ballots had to be cured by 5 p.m. ET and overseas ballots – from expats and military personnel – had to be postmarked by Election Day and received by 5 p.m. ET Friday in order to be counted.
(ibid.)

というくだりがある。

ここに出てくる provisional ballot とは「暫定投票」「仮投票」ということで、また cure a ballot とは、辞書には載っていないが、事前の選挙登録に署名がなかったり異なるように見えたりした場合に、本人確認ができれば投票を有効にできるということ、だそうである。

こう書いてはみたものの、あくまでネットで調べた内容の受け売りだ。日本の選挙にはないはずの方式であることもあり、実は詳細はよくわからない。先に書いた慣用句のニュアンスと同じく、制度の違いは部外者には理解しがたいところがある。

さて大統領選挙はバイデン氏が勝利を確実にしたが、勝者総取り winner-take-all 方式のため選挙人 electoral college の数では差がついたものの、一般投票 popular vote は大差がついたとは言い難いだろう。

この選挙人制度といい、「11月の第1月曜日の次の火曜日」という投票日の設定といい、現代にはそぐわない仕組みを今も守っているのが不思議である。

選挙人制度については、一般投票の多数得票者ではない候補者が当選することがあるので変ではないかと思ってしまうし、事実アメリカでもそうした指摘が出ているが、変えようという動きはないようだ。

学生の時、講義でアメリカの大統領選挙が扱われたことがあったが、その時に先生が「理屈では、一般投票と獲得選挙人で多数を取る候補者が異なったり、選挙人を候補者でちょうど半分ずつ分け合ったりすることはあり得るが、実際にそれが起きる可能性は少なく問題はない」と説明していたのを今でも覚えている。

しかし一般投票で多数を取った候補者が負ける例は何度か起きているうえ、一世紀以上も皆無の状態が続いたが、2000年そして2016年と近年続いている。さらに今回は、接戦州の票の出方によってはバイデン・トランプ両氏が選挙人を同数の269人ずつ分けあうこともありうる状態だった。

この制度を変えようという動きが見られないのは、素人考えだが、アメリカの有権者が慣れてしまっているということに加えて、選挙人制度が「白黒をつける一騎打ち」というスリリングな要素を高め、それがアメリカ人の気質にあっているから、というのが本当のところではないだろうか。

今回の選挙は、一般投票と選挙人獲得数どちらもバイデン氏の多数となったので問題なかったが、それでも先に書いたように、トランプ氏も一般投票で相当の票を取っている。

そして、アメリカメディアのサイトで各州の郡での得票を見ると、州全体としてはバイデン氏が勝っていても、都市部以外は軒並みトランプ氏が取った、というケースがどの州でも目立っている。それだけトランプ氏の支持は根強い、あるいは分断の根が深い、ということなのだろう。

今後トランプ氏が法廷闘争を繰り広げても、結果がひっくり返ることにはならないと思うが、これだけ溝の深まった国民の融和は一筋縄ではいかないだろう。議会では民主党が事前の予想とはうらはらに苦戦しているようだし、バイデン氏の前途は容易ではないといえそうだ。

過去の参考記事:
勝負はこれからだ (The opera isn't over until the fat lady sings.)
It's not over until it's over. ~ヨギ・ベラとは何者か? 

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タグ:トランプ
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